| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-583  (Poster presentation)

鳥獣被害と対策意識の構造分析【A】
Structural Analysis of Awareness on Wildlife Damage and Countermeasures【A】

*石井優衣, 髙橋俊守(宇都宮大学)
*Yui ISHII, Toshimori TAKAHASHI(Utsunomiya Univ.)

鳥獣被害対策の効果を高めるには、農家をはじめとする地域住民の積極的な参加が不可欠であるが、その参加意欲は多様な心理・社会的要因に影響されることが、これまでの意識調査から示されている。 農家意識の構造的要因解明において、潜在変数間の複雑な因果関係をモデル化するには共分散構造分析(SEM)が有効である。
そこで本研究は、科学的知識、被害認識、対策効果の認識、対策意欲、を4つの潜在変数としてSEMに投入し、被害や効果の認識、科学的な知識が対策意欲に及ぼす経路効果を検証することを目的とした。このため、それぞれの潜在変数に対応した17の観測変数から成る設問を用意し、農家の「被害認知→期待形成→行動意欲」という鳥獣被害に対する対策意欲に特化したプロセスを反映させたモデルを形成する。
 調査は、栃木県西部の鳥獣害の程度が低い地域から高い地域における、直売所へ農産物を持ち込む農家を対象としたアンケートを実施して、184件の回答を得た。探索的・確認的因子分析で信頼性・妥当性を確認後、SPSS/AMOSを用いてパスモデルを推定し、適合度指標(CFI>0.90,RMSEA<0.08等)で経路効果を検証した。
 この結果、科学的知識が被害認識に強い正の影響(パス係数0.68、p<0.001)を及ぼし、これが対策意欲を強く促進(0.64、p<0.001)することが明らかとなった。科学的知識は対策効果の認識にも寄与(0.30、p<0.05)し、これが意欲をさらに補強(0.37、p<0.05)する。被害認識から対策効果認識への効果(0.15、p<0.05)も有意である。
 これにより、知識向上策が被害認識と効果期待を介して参加意欲を最大化する経路が中心であることが示唆された。鳥獣対策の参加意欲を高めるには、農家や住民を対象にした研修やモニタリング機会の提供による学習活動を重視すべきである。
 今後は、現在行われている学習活動の内容を詳細に確認するとともに、参加意欲が行動につながる意識変容のプロセスについても調査を進めていく予定である。


日本生態学会