| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-585 (Poster presentation)
水田は湿生/水生植物の生育地として機能している。しかし近年水田放棄地の増加,および放棄後に低下した植物の多様性を再生させる人々の営みに応じた取組の確立が課題となっている。そこで本研究では自然再生と生産活動を両立する取り組みとして「再生型放牧」に焦点を当てた。北海道黒松内町のGladney Farmでは,在来植物種に配慮し,牧草種の播種はせず放牧後一定の期間土地を休ませる放牧が実施されている。この事例を取り上げ,水田放棄地における再生型放牧が植生の種多様性に与える影響を解明することを目的とする。
調査地はGladney Farm内の水田放棄地である。そのうち再生型放牧を実施したImpact区(以降I区),未実施のControl区(以降C区)に1.5m四方のコドラートを各10か所設置し,植生調査と環境調査を行った。植生調査では各種の植被率を計測した。環境調査では土壌C,N濃度,C/N比,土壌硬度,含水率,pH,相対照度を計測した。I区とC区の間で種数と種組成を全種,湿生種,非湿生種で比較した。
種数を比較すると全種と湿生種ではI区の方が高かった。再生型放牧により植物の種多様性は高まると考えられる。水田放棄に伴い多様度を下げる強い要因は含水率の低下であるが,牛の踏み跡により含水率が高まったI区は水田同様湿生植物の生育地として機能している可能性がある。非湿生種ではC区の方が種組成のばらつきは高く,シロツメクサなど牧草種が増えたI区と異なる種組成だった。含水率が高いI区では,C区に生育していた非湿生種が消失したと考えられる。
なお,Gladney Farmでは水田放棄地だけでなく牧草地として利用されていた場所にも放牧区が設置されている。牛がI区とI区以外の放牧地の間を移動することにより牧草の種子が運搬され,I区の種組成がC区から変化した可能性が示唆された。