| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-590  (Poster presentation)

ヒトの多様な捕獲は異なる恐れの景観を作り出す:ニホンザルの生息地選択に対する影響【A】
Diverse human culling methods create heterogeneous landscapes of fear: Influence of culling on habitat selection in Japanese macaques【A】

*三谷友翼(岩手大学大学院), 千本木洋介(BOULDER(株)), 江成広斗(山形大学)
*Yusuke MITANI(Graduate School of Iwate Univ.), Yosuke SENBONGI(BOULDER Co.,Ltd.), Hiroto ENARI(Yamagata Univ.)

多くの被食動物は、ヒトを含む捕食動物の活動性や捕食スタイルに応じた恐れの景観(捕食リスクが高まる場所や景観構造)を認知し、生息地利用を時空間的に変化させることで捕食を回避している。ヒトは異なる捕食スタイルに該当する複数の捕獲手法を併用する特異的な種であるが、手法の違いが中・大型哺乳類に認知させる恐れの景観にどのような差異を生じさせるのかを検討した事例は乏しい。本研究では、ヒト以外の捕食者が乏しく、複数の捕獲手法が併用されることの多いニホンザルを対象に、本種の生息地選択に対するヒトの捕獲の影響を評価することを目的とした。これにより、本種の被害管理における効果的な捕獲の運用方法について本発表では議論する。本評価に際して、福島県南会津町において8つの加害群に装着されたGPS首輪から群れの位置情報を取得し、季節ごとに異なる一般化線形混合モデルを構築して各要因(集落ごとの捕獲個体数、植生、地形)の影響を定量化した。モデル全体の傾向として、ニホンザルは捕獲圧の高い地域を避けたが、その影響は限定的であった。捕獲方法(銃捕殺、くくり罠、箱罠)ごとの影響を評価した結果、各手法の影響は季節によって異なった。これらの結果から、捕獲はニホンザルにヒト由来の恐れをもたらすが、捕獲だけでは生息地利用を改変させられない可能性が示唆された。また、本研究の結果は、本種が追跡(銃捕獲)と待ち伏せ(罠捕獲)という捕獲スタイルの違いに対して異なる行動戦略を持ち合わせている可能性を示唆している。以上のことから、群れの生息地利用の改変と群れサイズ調整のための継続的な捕獲という目的の違いに応じて、複数の捕獲手法や対策手法を組み合わせることが重要であると考えられた。


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