| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-592 (Poster presentation)
2011年に世界農業遺産(GIAHS)に認定された「能登半島」は、里山里海と人の営みが密接に関わりあい、森林や水田、ため池、小川などがモザイク状につながることで、伝統的な景観と豊かな生物多様性を育んできた。しかし2024年の能登半島地震と奥能登豪雨は、水田の破損や農業者の離農による多くの耕作放棄地の発生を引き起こし、水田生態系に深刻な攪乱を与えた。現在、環境省と石川県によって復興のシンボルとして2026年の能登半島でのトキ放鳥の準備が進む中、餌場となる水田生態系の現状把握は不十分であり、特に2つの災害(地震・豪雨)がもたらした影響については評価がなされていない。
そこで本研究では、能登でのトキ放鳥に向け、水田生物の現状を「広域(能登半島全域)」と「詳細(モデル地区)」の2スケールで調査した。広域調査では、能登全域44地区で水田の被害や作付状況を記録した。また2023年と24年の田植え期から12月まで、トキと食性が類似するサギ類の採餌個体数を調査し、景観要因との関係を分析することで、能登全域でのトキの生息ポテンシャルを推定した。詳細調査では、石川県トキ放鳥推進モデル地区で、能登半島の最北端に近い珠洲市三崎町粟津地区を対象に、2023年、24年、25年の各6月に水生生物(ドジョウ、カエル等)と陸生生物(バッタ、クモ等)の個体数を調査し、GLMM解析を行った。
調査の結果、能登半島の水田面積は、地震によって特に能登北部で顕著に減少しており、地域間でトキの生息ポテンシャルに大きな差が見られた。一方、珠洲市粟津地区においても、2024年1月の地震後には地区内の50%超が休耕するなど被害は深刻であり、同年9月の豪雨によって地区内すべての水田が冠水した。これらの2つの撹乱とそれに伴う耕作有無や環境要因の変化に対して、一部の水田生物は攪乱翌年の2025年には災害前の水準まで速やかな回復傾向を示したものの、分類群ごとに攪乱に対する応答は様々なパターンを示した。