| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-594  (Poster presentation)

植栽樹木からの逸出による稚樹の分布拡大ポテンシャルの推定【A】
Estimating the potential distribution spread of saplings from escaped planted trees【A】

*髙平こころ, 廉明徳(広島大学)
*Kokoro TAKAHIRA, Akinori REN(Hiroshima Univ.)

都市域では景観形成を目的として多様な樹木が植栽されているが、その一部は植栽地周辺に稚樹を成立させ、管理範囲を越えて分布を拡大する「逸出」を引き起こすことがある。植栽樹木の逸出は、在来植生との競合や生態系構造の変化を通じて、生物多様性保全上の課題となっている。しかし、都市域において複数樹種を対象に、稚樹の分布距離や個体数分布を系統的に比較した研究は少ない。本研究では、広島大学東広島キャンパス構内に植栽されたアキニレ、アラカシ、イチョウ、イヌエンジュ、クロガネモチ、シラカシ、ナンキンハゼ、ハリエンジュの8種を対象とし、植栽樹木から逸出した稚樹の分布特性を比較することで、樹種ごとの分布拡大ポテンシャルを推定することを目的とした。調査では、稚樹と最も近接する同種母樹との直線距離を測定し、距離分布および個体数を樹種別に解析した。その結果、鳥類による種子散布を行うクロガネモチおよびナンキンハゼでは、母樹から離れた地点にも稚樹が成立し、不連続かつ広範な分布が確認された。一方、重力散布を主とするアラカシおよびシラカシでは、稚樹は母樹近傍に強く集中していた。これらに対し、主として風による散布が関与すると考えられる樹種では、分布距離および個体数は両者の中間的な傾向を示したが、その分布特性には樹種間で差が認められた。これらの差異は、散布様式の違いに加え、樹高や果実・種子の形態といった形質の差が、稚樹の成立位置に影響を及ぼしている可能性を示唆している。以上より、植栽樹木の逸出ポテンシャルは一様ではなく、複数の生態的特性の組み合わせによって規定されることが明らかとなった。特に、稚樹の最大分布距離は、各樹種が最低限到達し得る分布範囲を示す指標であり、都市緑地における植栽管理および樹種選定を検討する上で重要な基礎的知見となる。


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