| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-596 (Poster presentation)
近年,ニホンジカの増加により南九州の山岳ブナ林ではササ類が消失し,リター保持や表層被覆が減少することで土壌侵食が発生している。侵食は有機物の流亡や土壌の緻密化を招き土壌動物・微生物を介して有機物分解や窒素供給などの土壌生態系機能低下につながる可能性がある。こうした侵食地で土壌生態系とその機能を評価した研究例は少ない。一方,リターの人工的追加は土壌生態系とその機能の回復策となり得るが,侵食が発生した森林での効果検証は十分でない。 そこで本研究は九州大学宮崎演習林・三方岳のブナ樹冠下において(1)谷部のリター有区(侵食なし),(2)稜線部のリター無区(侵食あり),(3)リター無区に2年間リター被覆した人工的リター有区を,上層木・リターがない地点に(4)裸地区(侵食が進んだ参照地点)を設定し,A0層乾燥重量,土壌物理化学特性(容積重・実容積・硬度・CおよびN濃度・CN比),土壌中型動物,微生物(BR,SIR,PLFA),土壌機能(セルロースシート分解率,N無機化速度)を測定し侵食の影響とリター被覆の効果を検証した。 リター無区・裸地区はリター有区に比べA0層量,C・N濃度,土壌動物数,BR・SIR,菌類・細菌およびPLFA総量が小さく,N無機化速度も低い傾向で,実容積・硬度・G+細菌/G−細菌比が高いなど,土壌生態系や機能の劣化が見られた。人工的リター有区ではリター無区に比べ土壌中型動物数が増加し,実容積が低下した。BRは増加傾向,BR/SIRは有意に増加した一方,PLFAやSIRは変化しなかった。分解率は増加傾向があったが有意差はなく,N無機化も有意な変化は検出されなかった。また,土壌C・N濃度およびCN比も有意に変化しなかった。 以上より,侵食地では土壌生態系と機能が劣化し,人工的なリター被覆は2年でも土壌動物の個体数と土壌の孔隙構造の回復に寄与するが,微生物量やN無機化速度,土壌C・N濃度は2年では回復が見られないことが明らかとなった。