| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-598  (Poster presentation)

環境DNA分析を活用した地域の生物多様性教育の短期的および長期的効果【A】
The short- and long-term effects of regional biodiversity education using environmental DNA analysis【A】

*木谷亮太(神戸大学), 佐賀達矢(神戸大学), 笠田実(北海道大学), 清野未恵子(神戸大学), 佐藤真行(神戸大学), 丑丸敦史(神戸大学), 源利文(神戸大学)
*Ryota P. KITANI(Kobe University), Tatsuya SAGA(Kobe University), Minoru KASADA(Hokkaido University), Mieko KIYONO(Kobe University), Masayuki SATO(Kobe University), Atushi USHIMARU(Kobe University), Toshifumi MINAMOTO(Kobe University)

生物多様性の縮小には人為的な影響が大きく、保全には市民の生物多様性に対する知識や保全意識を高めることが重要である。そのため、地域の生物相を調査する環境教育が効果的だと考えられるが、教育現場では知識や時間の制限から多種の同定が時に困難であり、地域の種多様性を十分に反映した教育活動は難しい。環境DNA分析は環境水から簡便に生息種を調査できるため、上記の課題を解決する新たな教育ツールとなる可能性がある。本研究では環境DNA分析を用いた教育プログラムを計画し、3つの高校に通う生徒を対象としてその教育効果を検証した。プログラムを高校の授業時間3回分で設計し、基礎的な授業、河川での環境DNAサンプリング作業、環境DNA分析の結果を用いた生物多様性に関するグループワークを実施した。プログラムの開始前、サンプリング作業後、終了直後、および終了から1年経過後の計4時点でアンケート調査を実施し、プログラムの短期的および長期的な効果を評価した。環境DNAメタバーコーディング解析の結果、生徒が採水した河川サンプルから計36種類の魚類が検出され、生徒は簡便なサンプリング調査から地域の魚類相を認識することができた。授業終了直後のアンケートの結果から、本研究の環境教育によって生徒は生物多様性への関心を高めたことが示唆された。特に、高校近くの河川における種多様性の認識や、地域の生物多様性の保全意識が顕著に上昇した。環境DNA分析を用いた授業によって生徒は地域特有の種の多様性を認識し、保全への意識を向上させたことが示唆された。さらに、プログラムで向上した保全意識は1年後も維持されることが明らかになった。本研究は環境教育による意識変化が長期間維持されたことを示す貴重な知見であり、教育現場において環境DNA分析が地域の生物多様性の保全意識を長期間養うことに効果的な教育ツールであることを示唆する。


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