| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-599  (Poster presentation)

深層学習を用いた斜面崩壊地に残存する生物学的遺産の空間分布の推定【A】
Estimating the spatial distribution of biological legacies remaining in landslide-affected areas using deep learning【A】

*村上広樹(大阪大学), 芳賀智宏(大阪大学), 堀田亘(国立環境研究所), 森本淳子(北海道大学), 松井孝典(大阪大学)
*Hiroki MURAKAMI(The University of Osaka), Chihiro HAGA(The University of Osaka), Wataru HOTTA(NIES), Junko MORIMOTO(Hokkaido University), Takanori MATSUI(The University of Osaka)

近年,大規模地震や大雨による山林崩壊が頻発している.広域な崩壊地すべてを土木工事で復旧させることは人的・経済的コストの観点から困難である.そこで,撹乱後の生態系に残存する生物や有機物等の生物学的遺産(レガシー)を活用した,現地起点での植生回復が注目されている.しかし,広域におけるレガシーの空間的な残存状況を正確に把握する手法は確立されていない.
 本研究では,2024年能登半島地震で発生した2,141箇所の斜面崩壊地を対象に,リモートセンシングと深層学習を組み合わせたレガシーの代理指標である植生被覆率の空間分布を推定する分類器を開発した.手法として,国土地理院が公開している航空写真の正射画像を画像パッチに分割し、レガシーの被覆率に基づき5クラス(0%,0-25%,25-50%,50-75%,75-100%)のラベルを付与した.入力データにはRGBに標高,勾配,可視光植生指標(VDVI)を統合した6チャンネルの学習データを構築した.レガシーの空間分布の推定では,複数のリモートセンシングデータからレガシーを推定するHybridModelを構築し,SVM・Random Forestなどの従来型の機械学習やCNN・ViT・MLP-mixerなど既存の画像認識モデルとの精度を比較した.レガシーの空間分布には空間的な自己相関があるため,学習データを空間的に8分割したのち,外側8回,内側7回の入れ子交差検証でハイパーパラメータのベイズ最適化を行った.
 交差検証の結果から,提案モデルであるHybridModelは既存のモデルよりも高い精度を示し,特に,中間クラスの誤分類を抑制できた.また,斜面単位での被覆面積を推定したところ,実測値に対して高い相関(r=0.99)を達成し,災害後のレガシーを活用した森林再生の優先順位の検討に対して有用な情報を提供できることが示された.


日本生態学会