| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-600  (Poster presentation)

産学連携によるネイチャーポジティブの試み:大気環境DNAでみる工場緑地の菌類多様性【A】
Industry-Academia Collaboration for Nature-Positive Goal:Assessing Fungal Diversity in Industrial Green Spaces Using Airborne eDNA【A】

*靏田悠人(大阪産業大学), 前田拓人(大阪産業大学), 横部智浩(京都大学), 松岡俊将(京都大学), 久保昌之(京都大学), 原田充(パナソニックHD), 德地直子(京都大学), 赤石大輔(大阪産業大学)
*Yuto TSURUTA(Osaka Sangyo Univ.), Takuto MAEDA(Osaka Sangyo Univ.), Tomohiro YOKOBE(Kyoto Univ.), Shunsuke MATSUOKA(Kyoto Univ.), Masayuki KUBO(Kyoto Univ.), Mitsuru HARADA(Panasonic HD), Naoko TOKUCHI(Kyoto Univ.), Daisuke AKAISHI(Osaka Sangyo Univ.)

パナソニック株式会社の工場緑地「共存の森」は2023年に自然共生サイトに登録された。発表者らは、共存の森の菌類多様性を大気環境DNAを用いてその有用性を検討している。前年度の研究では調査地点は林内の地上に限られていたため、環境DNAがどの程度移動、拡散しているかが不明であった。そこで今年度の調査では共存の森内4地点に加えてあらたに林冠部2地点と、隣接する広場2地点を追加した。
2025年5月から10月にかけて、各地点で月一回、14時から翌日14時まで24時間(2L/min)大気のサンプリングを行った。フィルターに吸着した環境DNAのメタバーコーディングを行い共存の森における菌類多様性の季節変化、林内と林外、高さの違いを明らかにした。
結果、2024年度の全地点の合計ASVは3,501であった。2025年の全地点の合計ASVは12,198であった。ASV数は両年ともに夏から秋にかけて増加する傾向が見られた。また、6月と8月にASV数が減少する傾向が見られた。林内、林冠、広場といった場所によるASV数の差は明確ではなかった。Bray–Curtis距離に基づくNMDS解析の結果、菌類群集構成は季節の影響を強く受けることが示された。一方で、高さや地点の違いによる影響は、季節ほど明瞭ではなかった。検出された菌類のギルド組成では、木材腐生菌(5.8%~87.4%)が最も高い割合を占めていた。外生菌根菌は9月以降に増加するなど季節性を示した。Fungal Traitによる分類では外生菌根菌は8目24科45属161種検出された。種数が多かった上位3属はフウセンタケ属(22種)、ベニタケ属(20種)テングタケ属(14種)で、これらのうち林内に存在しない樹種と共生する菌類も検出された。
大気中環境DNAを用いて菌類群集の季節性を捉えることができたと考られた。一方、林冠や林外180mの範囲では変化が少ないと考えられた。採集する環境DNAは周辺地域から飛来した菌類のDNAを含むことが示唆されたため、周辺環境からのDNAの移入について考慮が必要と考えられた。


日本生態学会