| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-602  (Poster presentation)

産学連携によるネイチャーポジティブの試み:地表徘徊性昆虫相からのアプローチ【A】
Industry-Academia Collaboration for the Nature-Positive Goal: Approach from the data of ground beetle【A】

*遠田実礼(京都大学), 德地直子(京都大学フィールド研), 原田充(パナソニック HD), 久保昌之(京都大学), 淺野悟史(京都大学), 横部智浩(京都大学フィールド研), 秦野悠貴(京都大学フィールド研), 松岡俊将(京都大学フィールド研)
*Mirei TODA(Kyoto Univ.), Naoko TOKUCHI(FSERC, Kyoto Univ.), Mitsuru HARADA(Panasonic HD), Masayuki KUBO(Kyoto Univ.), Satoshi ASANO(Kyoto Univ.), Tomohiro YOKOBE(FSERC, Kyoto Univ.), Yuki HATANO(FSERC, Kyoto Univ.), Shunsuke MATSUOKA(FSERC, Kyoto Univ.)

 現在、ネイチャーポジティブというキーワードのもと、企業を含む社会全体での生物多様性保全への動きが求められている。 自然共生サイトであるパナソニック草津拠点「共存の森」は、工場内緑地として、2011年から生物多様性に配慮した管理と生物相モニタリングが行われている。オサムシ科甲虫は移動性が低く環境指標生物として知られるが、共存の森では2014年以降は調査が行われていない。本研究では植生変化に伴うオサムシ科甲虫相の変化を調べるため、2024年度と2025年度にピットフォールトラップ調査を行い、2011年から2014年の過去の調査結果との比較を行った。 さらに、共存の森及び周辺地域におけるエコロジカルネットワークの現状を確認するため、2025年度は桐生試験地や龍谷の森等でも調査を行った。また、効率的な地表徘徊性昆虫の調査手法検討のため、共存の森における土壌環境DNA調査を予備的に行った。
 共存の森では2012年から2014年にかけて高木層が増加し植被率が上昇した。調査区K8において、オサムシ科甲虫は、草地性種の個体数は2011年が12個体、2012年が8個体であったが2013年以降は確認されなかった。また、2011年から2014年の調査において、森林性種の増加傾向は調査区K8では確認されなかった。調査区K7で2024年度に採取された土壌環境DNA調査においても、オサムシ科の配列は得られなかった。
 一方、共存の森から3kmほど離れている龍谷の森では、生物のソースと仮定していた桐生試験地よりも多く森林性種が採取された。龍谷の森は施業の履歴が少なく地表徘徊性昆虫が保全されているためだと考えられる。
 これらの結果は、共存の森では高木の発達に伴い草地性種のオサムシ科甲虫が減少した一方で、森林性種が移動可能なコリドーが欠けているために、周囲の森林から共存の森への移入が限られている可能性を示唆している。今後、オサムシ科甲虫の多様性回復には、コリドーの設置や個体の導入を検討する必要があるだろう。


日本生態学会