| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-605  (Poster presentation)

ALS点群由来の森林構造指標を用いた斜面崩壊防止機能の評価【A】
Evaluation of slope stabilization function using ALS-derived forest structure indicators【A】

*橋本夏果(京府大生命環境), 中田康隆(京府大院生命), 長島啓子(京府大院生命)
*Natsuka HASHIMOTO(Kyoto Prefectural Univ.), yasutaka NAKATA(grad Kyoto Prefectural Univ.), keiko NAGASHIMA(grad Kyoto Prefectural Univ.)

近年、森林生態系が有する防災・減災機能、とりわけ根系の緊縛作用等による表層崩壊防止機能への期待が高まっている。従来は立木密度などの平面的指標による評価が主流であったが、航空レーザ測量技術の進展により、階層構造や下層植生を含めた三次元的な森林構造の把握が可能となった。本研究では、令和6年能登半島地震の被災地を対象に、航空レーザ測量点群から得られる三次元的な森林構造指標を用い、森林の表層崩壊防止機能の定量的評価を行うことを目的とした。
解析にあたり、ArcGIS Proを用いて表層崩壊地と面積分布の対応する非崩壊地を抽出した。さらに統計解析環境Rおよび点群解析ソフトFusion/LDVを用いて森林構造指標を算出し、地形量や地質、誘発要因などの説明変数と統合してデータベースを構築した。その際、多重共線性を考慮した上で、地形・地質要因のみのモデルと、針葉樹林・広葉樹林ごとに森林構造指標を説明変数として加えた一般化線形モデルを比較し、各変数が表層崩壊発生に及ぼす影響を評価した。
解析の結果、斜面傾斜角やTWIなどの地形要因は一貫して崩壊発生に対して正の関係を示した。一方で森林構造指標を考慮したモデルでは、針葉樹林において樹高、下層植生の多寡、葉面積指数が負の関係を示し、広葉樹林では樹高および葉群階層多様度が負の関係を示した。これらの結果は、樹高の成長や複雑な階層構造の発達に伴って根系機能が強化されること、および下層植生が降雨の浸透や表層浸食を抑制することで、斜面の安定化に寄与していることを示唆している。
本研究において、航空レーザ測量点群から算出可能な三次元的な森林構造指標を用いることで、森林の表層崩壊防止機能の定量的に評価することが可能であることが示された。今後は、樹種や地質構造、降雨特性等を含めたより詳細な解析を進め、森林生態系の機能を防災・減災に活用するための基礎的知見の蓄積に貢献することが期待される。


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