| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-607  (Poster presentation)

RTK-UAVを用いた能登半島地震で発生した大規模崩壊地の初期植生回復と立地要因【A】
Initial vegetation recovery and site factors in large-scale landslide scars triggered by the Noto Peninsula Earthquake, analyzed using RTK-UAV data【A】

*中川あかり(京府大生命環境), 長島啓子(京府大院生命), 中田康隆(京府大院生命)
*Akari NAKAGAWA(Kyoto Prefectural Univ.), Keiko NAGASHIMA(Grad school of KPU), Yasutaka NAKATA(Grad school of KPU)

2024年1月の能登半島地震および同年9月の奥能登豪雨により約5,800箇所以上の斜面崩壊が発生した。崩壊斜面では、土砂流出抑制や生物多様性保全、コストの観点から、自然の回復力を活かした植生回復が重要となる。そこで、測位精度が高いRTK (Real-Time Kinematic)-UAV (Unmanned Aerial Vehicle)およびマルチスペクトルセンサを用い、大規模地すべり斜面と表層崩壊斜面を対象として発災後から1年8か月間における初期の植生回復過程に影響を及ぼす立地環境要因と、回復した植物種の生態特性を踏まえて、地すべり斜面における自然回復特性を評価した。本研究では、空撮データから算出した植生成長量を目的変数、立地環境因子を説明変数とした一般化線形モデルによる解析を行った。あわせて、植物相調査に基づき、崩壊斜面において自然回復した植生の特徴を整理した。その結果、地すべり斜面と表層崩壊斜面では、いずれも中程度の日射を受ける安定した表層条件が初期の植生回復に寄与していることが示唆された。また、地すべり斜面では動物散布型種子を有する植物の出現頻度が高かった。これは、地すべり斜面に特徴的な緩傾斜および斜面上に多く残存する倒木などの生物学的遺産が動物の生息環境を提供し、種子散布を促しているためと考えられる。一方、表層崩壊斜面では風散布型種子を有する植物の出現頻度が高かった。これは、表層崩壊斜面の崩壊面積が比較的小さく、林縁部からの距離が近いことから、崩壊斜面周辺に残存する生物学的遺産が種子供給源として機能している可能性を示唆している。本研究では、高精度かつ非破壊的な手法により、能登半島地震後の地すべり斜面における初期の植生回復状況と、その回復過程に影響を及ぼす立地環境要因を定量的に評価することができた。今後は、新たな植生指数や植生構造指標の導入検討に加え、中・長期的な植生回復過程および立地環境の変動を継続的に観測することが重要である。


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