| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-608  (Poster presentation)

人工光を採餌利用するアマガエル個体は、しない個体よりも人工光を強く選好するか?【A】
Do tree frog individuals that exploit artificial light while foraging show a stronger preference for artificial light than those that do not?【A】

*伊藤響, 城野哲平(京都大学)
*Hibiki ITO, Teppei JONO(Kyoto Univ.)

夜間人工光は、人為的な環境改変要因の中でも特に影響範囲が広く、夜の暗環境を攪乱することで生物の生理や行動に適応上の不利益をもたらす。一方で、クモ類やカエル類のような一部の捕食者種で、人工光源周辺に誘引された昆虫資源(夜光ニッチ)を利用することによって採餌効率の上昇という適応的利益を享受することが報告されている。しかしながら、夜光ニッチ利用の行動的メカニズムについては、コガネグモ類では明環境への選好性を持ち、オオヒキガエルでは持たないといったように、種間差を示すことが明らかになりつつある。ヒガシニホンアマガエルでは、これまでの調査から夜光ニッチ利用による採餌効率や栄養状態の向上、人工光源周辺への定着性などが確認されてきた一方で、その行動的メカニズムについては明らかになっていない。そこで本研究では、本種が夜光ニッチを利用するメカニズムを室内実験によって検証した。照度勾配をつくったケージ内に個体をはなして、最も長時間滞在した位置の照度を測定し、夜光ニッチがある地点から採集した個体とない地点から採集した個体とで選好した照度を比較することによって、明環境に対する選好性を夜光ニッチの利用経験を通じて獲得しているかを評価した。その結果、選好した照度に個体群間で差異はみられなかったことから、夜光ニッチを利用した採餌は、学習を通じた明環境への選好性の獲得によるものではないと考えられる。一方で、選好した照度はアリーナ内でのランダムな箇所の照度よりも有意に高いことが示され、本種が夜光ニッチの利用経験に関わらず生得的に光を選好することが示唆された。オオヒキガエルが夜光ニッチを利用するにもかかわらず明るい環境を忌避することを示した先行研究の結果を考え併せると、本研究は夜光ニッチへの適応メカニズムが同じカエル類でも多様である可能性を示している。


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