| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-609 (Poster presentation)
水田生態系は継続的な人為攪乱のもとで成立する一方、様々な影響を受け、生物多様性や生態系の機能は減少の一途を辿る。なかでも、害虫駆除のために使用される「殺虫剤」と、イネの倒伏防止、過剰分げつの防止や耐候性の向上などを目的に行われる「中干し」(水田を一時的に乾燥させる作業)は、水田の生物群集に対して、特に甚大な影響を与えるものと考えられている。しかも、両攪乱は同時期に生じることから、群集に対して複合的に作用し得る。実際、両攪乱がトンボ類の減少要因のひとつであるとの知見が得られている。しかし、トンボ類への影響がほかの生物や群集全体でも起こるかは分からない。仮に、殺虫剤と中干しの影響が多種に及ぶのであれば、群集の組成は大きく変化するだろう。そこで本研究では、水田を模した実験生態系を創出し、4つの処理(無処理:C、殺虫剤単独:F、中干し単独:M、殺虫剤と中干しの複合:FMの各4反復)に対する水田昆虫群集の応答を評価した。実験期間と各処理の実施時期は、奈良県で主流なヒノヒカリの農事暦に準拠した。6月中旬に模擬水田に湛水した後,2週間後に殺虫剤(フィプロニル)を育苗箱処理したイネを定植した。その後1週間、中干しを行った。イネの定植後、10月上旬の落水(稲刈り)まで、2週に1回の頻度(計7回)で、各処理に対する生物の動態をモニタリングした。その結果、調査期間を通じた昆虫の総個体数は、フィプロニル処理区(F,FM)でCと比べて有意に減少した。他方で、中干し処理後のFMは、Cと比べて昆虫の総個体数が有意に増加した。また、水田昆虫群集の組成は、それぞれCと比べて大きく変化した。特にFM処理下では、実験期間を通じて群集の組成の変化が大きかった。本発表では、これら各処理がもたらす生態影響の質や強度について、群集を構成する各種の生活史特性や、捕食-被食関係などの生物間相互作用の観点から議論する。