| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-612  (Poster presentation)

琵琶湖学習における環境教育の効果検証【A】
Effects of Environmental Education in the Lake Biwa Learning Program【A】

*君付茉優(国際基督教大学)
*Mayu KIMITSUKI(International Christian Univ.)

滋賀県では、日本最大の湖であり固有種を含む多様な生態系を有する琵琶湖を題材とした体系的環境教育「琵琶湖学習」が実施されている。生物多様性保全や水環境問題など地域固有の生態系課題を扱うこの学習は、学校教育と地域生態系を接続する実践の場として位置づけられる。本研究は、この地域資源を基盤とする一年間の探究的学習が中学生の環境知識・意識・関心・行動に与える影響を、「知識―意識―行動」モデルおよび態度形成理論の枠組みに基づき準実験的に検証することを目的とした。県内A中学校の1年生168名(受講前)および2年生170名(受講後)の計338名を対象に、2025年4月にリッカート尺度を用いた質問紙調査を実施した。本研究では追跡調査ではなく、同一校内における学年間比較でどの生徒も同様の影響を受けるという前提条件のもとで分析を行った。探索的因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果、「知識」「意識」「関心」「行動」の4因子が抽出され、内的整合性は十分であった(Cronbach’s α=0.78–0.84)。独立サンプルt検定の結果、2年生は環境知識、環境意識、自然への関心において有意に高い得点を示した(p<.05)。特に滋賀県が推進する持続可能な地域目標Mother Lake Goals(MLGs)や地域生態系の保全課題への理解が向上していた。一方、環境配慮行動には有意差が認められなかった。重回帰分析では、環境意識(β=0.40)および知識(β=0.21)が行動に有意な正の影響を示したが(R²=0.25, p<.001)、学習経験の有無自体は直接的な行動差を生まなかった。この結果から、生態系理解の深化と実践行動の間になんらかの媒介要因が存在する可能性が示唆された 。上記を踏まえ、地域生態系を基盤とする環境教育の効果と限界を明らかにし、行動化を促進する教育設計の検討課題を提示する。


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