| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-614 (Poster presentation)
日本の都市部には、神社仏閣・歴史公園に付帯する池や水鉢などの小規模水域が多数点在している。こうした水域は都市部におけるトンボ類などの水生生物の生息地として機能する可能性がある。一方で、都市部の多くの水域は外来の水生生物の侵入・定着により、在来の水生生物の繁殖や個体群維持が妨げられている可能性も指摘されている。本研究では、東京都区部の神社仏閣・歴史公園に分布する小規模水域を対象に、トンボ類の生息地としての機能を評価すると共に、水生外来動物の存在がトンボ類の繁殖を妨げているかを検証する。
2024年4月から2025年10月にかけて、東京都区部に点在する神社仏閣・歴史公園内の池および水鉢においてトンボ類幼虫および羽化殻を採集し、同時にこれらの水域に来訪したトンボ類成虫の個体数を記録した。採集・観察されたトンボ類は科レベルで分類した。トンボ類の分布に影響を与える環境要因を特定するために、水域面積、水生植物の植被率、観察された外来動物の種数等を測定した。
調査の結果、トンボ類幼虫9種134個体、トンボ類羽化殻21種242個、トンボ類成虫10種234個体が確認された。また調査した小規模水域では外来動物であるコイ、カダヤシ、アメリカザリガニ等が観察された。特筆すべき結果として、トンボ類羽化殻数は外来動物の種数が多い水域ほど減少した一方で、トンボ類成虫の来訪数には外来動物の影響は検出されなかったことがあげられる。観察された外来動物の大部分は捕食者によって占められていたことから、都市の小規模水域は、トンボ成虫にとって産卵に適した環境として選択される一方で、さまざまな外来動物により幼虫期の生存や羽化成功が阻害されることで、エコロジカルトラップとして機能している可能性が考えられた。したがって、都市の小規模水域において外来動物を適切に管理することで、トンボ類の生息地としてのポテンシャルを引き出せる可能性がある。