| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-615  (Poster presentation)

水田の立地条件が放棄後の植生変化と生態系サービスに与える影響 -印旛沼流域を例に-【A】
Influence of paddy field site conditions on post-abandonment vegetation change and ecosystem services -a case study of the Inbanuma watershed-【A】

*内川花野(東京大学), 西廣淳(国立環境研究所)
*Hanano UCHIKAWA(The University of Tokyo), Jun NISHIHIRO(NIES)

農地は食料生産だけでなく生物多様性保全や生態系サービスの提供の面でも重要性が指摘されている。これらの機能の一部は耕作放棄地でも維持されている可能性があり、食料の確保と生態系サービスの提供の長期的な観点からは、耕作放棄地は食料生産を再開するポテンシャルを維持しつつ多様な機能が発揮されるように管理することが望ましい。耕作を再開するためのコストや生態系サービスは耕作放棄後の植生発達に応じて変化すると考えられるが、その経時的な変化に関する知見は不足している。

本研究では、耕作放棄水田の効果的な管理・活用を検討するための基礎的研究として、放棄後の植生変化に影響する立地条件を明らかにした。さらに、将来の土地利用ポテンシャルの指標として、炭素貯留量と復田にかかるコストを評価した。

対象地域は千葉県印旛沼流域とし、谷津と沖積平野という異なる地形区分に位置する耕作放棄水田を選定した。耕作放棄された年とその後の植生変化は、水田区画を空間単位とし、航空写真に基づいて記録した。加えて野外調査で現状の植生を把握した上で、航空写真判読の精度を向上させた。解析では地形区分による植生変化の違いを比較し、さらに谷津に限定して植生変化に対する日照条件や水文学的条件の影響を調べた。また、植生変化速度が異なる二か所の耕作放棄水田で復田コストと炭素貯留量の経時的な変化を計算した。

平野では谷津よりも樹林化の開始が早いことが明らかになった。谷津における樹林化速度は日照条件や圃場整備による排水性の向上に影響を受ける可能性が示唆された。復田コストや炭素貯留量の増加が上限に漸近するまでの年数は植生変化速度に依存し、立地に応じて数十年単位の差が見られた。以上より、今後の耕作放棄地の利活用を検討する上で立地を考慮することの重要性が示された。


日本生態学会