| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-617 (Poster presentation)
近年、里山などの二次的自然においては、都市化や人口減少に伴う管理放棄による生物多様性の喪失が深刻な問題となっている。多様性の維持には適度な管理が不可欠とされるが、刈り取りの「高さ」「時期」「頻度」といった要素を組み合わせた複合的な管理が、地域全体の多様性や群集間の差異に及ぼす影響については十分に解明されていない。本研究では、実測データに基づくシミュレーションを用い、異なる刈り取り強度の組み合わせが植物の種多様性および機能的多様性に及ぼす影響を多角的に評価し、効率的な管理手法を検討した。
よこはま動物園内の里山を再現した二次林において、刈り取り高さ(0 cm、10 cm、放棄)と時期(初夏、晩夏、年2回)を組み合わせた処理区を設置し、植生および植物機能形質を調査した。さらに、得られた実測データから仮想群集を再構成し、2つの異なる処理を空間的に組み合わせた場合のβ、γ多様性を算出した。β多様性は在・不在で計算するSørensen非類似度と種の存在量を加味するBray-Curtis非類似度を用いた。
解析の結果、局所的なα多様性は10 cmの初夏の刈り取りで機能的多様性において高い数値を示し、γ多様性は10cmの処理同士の組み合わせで高い値を示した。また、単独では多様性を低下させる高強度の0 cm処理が含まれていても、低強度の10 cm処理と組み合わせることで高い多様性が維持されることが明らかとなった。β多様性は2種の指標で大きな違いはなく、処理の差が大きい組み合わせにおいて高い多様性を示した。
以上の結果から、里山生態系の植物多様性を維持・向上させるためには、局所的な多様性を高める「中程度の撹乱(10 cm刈り取り)」の実践に加え、撹乱強度の異なる管理を空間的に配置する「モザイク管理」が極めて有効であることが示された。本研究は、一律の管理ではなく空間的異質性を考慮した管理モデルを提示するものである。