| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-619 (Poster presentation)
世界農業遺産は、地域単位で伝統的農業システムを認定し、その価値を評価・保全し次世代に継承することを目的として設立された。認定地域の一つである宮城県大崎市を中心とした「大崎耕土」では、広大な水田地帯で水田害虫の土着天敵を活用した環境保全型農業が行われ、農業生産と生物多様性の両立が図られてきた。しかし近年、水田転作畑でのダイズ栽培面積の増加により、水田とダイズ圃場が混在する新たな農業景観へ移行しつつある。現在のダイズ栽培は化学的防除への依存度が高く、水田だけでなくダイズ圃場でも土着天敵を活用した農法の確立が求められる。そこで本研究では、大崎耕土のダイズ圃場を対象に、子実害虫であるマメシンクイガ幼虫およびフタスジヒメハムシと、その潜在的な天敵であるゴミムシ類(オオアトボシアオゴミムシ、キンナガゴミムシ、ミイデラゴミムシ)に注目し、土着天敵によるダイズ害虫被害軽減効果を連作年数と周辺景観の影響を踏まえて検証した。ダイズ14圃場28地点で、2024年8月にゴミムシ類をピットフォールトラップで採集し、同年10月に採集したダイズ莢の被害粒を加害種別に調査した。その結果、マメシンクイガ幼虫とフタスジヒメハムシの加害粒数は、オオアトボシアオゴミムシとキンナガゴミムシの個体数増加に伴い減少し、マメシンクイガ幼虫加害粒数のみダイズ連作年数と共に増加した。ゴミムシ類では水路に近い圃場ほどキンナガゴミムシ個体数は減少し、ミイデラゴミムシ個体数は増加した。これらの結果から、本地域のダイズ圃場でゴミムシ類は子実害虫の土着天敵として機能し、被害軽減に寄与することが示唆された。また、本地域の特徴的景観である水路がゴミムシ類の分布規定要因として重要な役割を担う可能性がある。本研究は、水田生態系に普遍的に生息するゴミムシ類が農業景観の変化に伴い、普通種から土着天敵へと機能的役割を転換している可能性を示している。