| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-621  (Poster presentation)

環境DNAを用いた河川における自然再生事業の効果の評価【A】
Impact assessment of nature restoration projects in rivers using environmental DNA【A】

*三田村碧(東北大学大学院), 長谷部勇太(環境科学センター), 石川昂汰(東北大学大学院, WPI-AIMEC), 田辺晶史(東北大学大学院, WPI-AIMEC), 近藤倫生(東北大学大学院, WPI-AIMEC)
*Aoi MITAMURA(Tohoku University), Yuuta HASEBE(Kanagawa Environ. Res. Ctr.), Kota ISHIKAWA(Tohoku University, WPI-AIMEC), Akifumi S. TANABE(Tohoku University, WPI-AIMEC), Michio KONDOH(Tohoku University, WPI-AIMEC)

生物多様性の損失が世界規模で進行しており、その保全と回復が喫緊の課題となっている。とりわけ、水生生物の主要な生息場である河川においては、コンクリート護岸化や河道の直線化による物理環境の劣化が進行しており、これが生物多様性の損失の主要因となっている。こうした状況を受け、失われた河川環境の機能を回復させる自然再生事業が各地で実施されている。しかし、これらの事業が生態系に与えた影響を適切に評価した事例は限られている。これは、従来の生態系調査法では、多地点・多分類群の網羅的な把握に多大なコストを要することや、適切な対照区の設定が困難であることが要因である。そこで本研究では、環境DNAメタバーコーディング法により、自然再生事業が生物群集に与える影響を評価することを試みた。具体的には、神奈川県内の河川において、環境DNAによる多地点の生態系調査を行い、魚類および水生昆虫の群集データを取得した。そして、1つの事業実施地点に対して環境条件が類似した3つの対照地点を選定し、両群間の群集構造を比較した。その結果、魚類および水生昆虫の分類群数には、事業実施による統計的に有意な差は認められなかったが、特に水生昆虫においては群集構造に有意な違いが確認された(部分冗長性分析、p < 0.05)。さらに指標種分析を行った結果、統計的に有意な指標種は事業実施地点においてのみ検出され(計11分類群)、その内訳としてトンボ目などが確認された。このことから、自然再生事業によって微生息場が創出され、特定の生物群集の定着・回復に寄与したことを示唆している。以上の結果は、自然再生事業の評価において、単なる種数の増減だけでなく、群集構造や種組成の変化に着目する重要性を示している。また、環境DNA技術は、低コストかつ網羅的なモニタリングを可能にすることから、自然再生事業の有効な評価手法となり得ると考えられる。


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