| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-624 (Poster presentation)
ナラ枯れはカシノナガキクイムシが媒介する病原菌により引き起こされる森林病害であり, 近年は都市近郊の緑地にも被害が拡大している. 都市緑地では, ナラ枯れの代表的被害樹木であるコナラに加え, クヌギ, シラカシ, マテバシイなど複数のブナ科樹木が混在していることが特徴である. しかし, このような環境においてUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)を用いてナラ枯れ被害を抽出し, 長期的な進行過程を定量的に評価した研究は少ない. 本研究では, 東京都町田市の玉川学園キャンパス内の緑地を対象に, UAVによる超高解像度空撮画像からナラ枯れ被害を抽出できるかを検証するとともに, 7年間にわたる被害の進行過程および樹種別の動態を明らかにすることを目的とした.
ナラ枯れ被害を抽出するため, UAV(DJI Phantom 4 Pro)を用いて2019年~2025年の6〜9月に空撮を行った. その後, オルソ画像を作成し, GISにより被害面積率を樹種別に算出した. 樹種の判別が困難な樹木については踏査を併用した. その結果, 空撮画像のみでは他の要因による枯死やツル植物の被覆による変色などと誤判別が生じたが, 踏査を併用することで高精度でのナラ枯れの抽出が可能となった. 被害面積率は2019年から2021年にかけて急激に増加し, その後は低位で推移したものの, 2025年時点でも被害は継続していた. 被害分布は, 林縁から林内へ, 西側から東側へと拡大する傾向を示した. 樹種別では, 調査期間を通じてコナラの被害が卓越し, クヌギ, シラカシ, マテバシイは2021年以降に確認されたが低水準で推移した.
以上より, UAVと踏査を組み合わせた手法は, 複数樹種が混在する都市緑地におけるナラ枯れ被害の抽出および長期的進行の把握に有効であることが示された. また, 都市緑地では複数のブナ科樹種が存在するにもかかわらず, 被害はコナラに集中し, その後, 他樹種へ波及するという明瞭な樹種間差が存在することが明らかとなった.