| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-625  (Poster presentation)

シカ侵入最初期における植生変化の定量的分析ー指定管理捕獲実施地域の多点調査から【A】
Quantifying vegetation changes during early sika deer invasion - Surveys in Certified Wildlife Capture Program Areas【A】

*日野まほろ, 鈴木牧(東京大学)
*Mahoro HINO, Maki SUZUKI(Tokyo Univ.)

ニホンジカ(以下シカ)侵入初期の生態系への影響は検出しづらく、シカが侵入して分布を拡大させる過程における植生変化を示すことは難しい。しかしシカ分布拡大を抑制するためには早期の対応が有効であり、侵入初期の生息地の状態を把握することは効果的な管理につながる。千葉県中部地域はシカの分布拡大途中の地域であり、分布拡大防止を目的として2015年から県主体の指定管理捕獲が実施されている。本研究ではこの地域において、シカ侵入初期から分布拡大段階の植生へ与える影響を定量的に示すことを目的とした。

2025年10月、千葉県中部の4市町のスギ林10地点、広葉樹林16地点の計26地点を対象に植生調査を行った。シカ密度指標には千葉県が2023年に行った糞粒調査の結果を用いた。合わせて、樹冠開空度、斜度、方位を測定した。糞粒数と植被率、種数の関係および種組成の変化を回帰分析や多変量解析により分析した。

分析の結果、糞粒数が増加するほど、植被率は有意に減少した。一方、種数には糞粒数との有意な関係は見られず、シカ侵入初期段階でシカ密度は種数に影響しない可能性が示された。また、斜度と種数には有意な正の関係が見られ、急傾斜地ではシカの採食行動が制限されていたと考えられる。一方、種組成に対しては糞粒数の有意な影響が見られた。アオキ、カンスゲなどシカ嗜好性種は糞粒数の少ない地点に、アリドオシ、クロモジなどシカ不嗜好性種は糞粒数の多い地点に分布する傾向が見られた。一方、シカ嗜好性種のリョウメンシダ、ヒサカキは糞粒数が多い地点でも確認されたが、これらの種がシカの採食行動が制限される急傾斜地や、生産性の高いギャップ下に生息していたためと考えられる。以上よりシカ侵入初期から分布拡大段階において、種組成はシカ食性に応じて変化していくが、生息環境によってはシカ嗜好種でも生息できる可能性があると示唆された。


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