| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-003 (Poster presentation)
富士山南東側斜面は、宝永大噴火の火山噴出物(スコリア)に覆われた貧栄養・高温・乾燥環境で、一次遷移が進行する火山荒原である。近年、登山客増加やインフラ整備、気候変動により外来植物侵入リスクが高まっているが、定着制限要因や生態系への影響は未解明である。本研究では、在来種のイタドリと、火山荒原への既侵入種の外来タンポポ種群とシロツメクサ、侵入リスクが高いフランスギクを対象に、現在の定着状況の調査、発芽特性を調べるための発芽実験、スコリアでの生育抑制を評価するための室内栽培実験、高温・乾燥の影響を評価するための野外栽培実験、イタドリと外来植物の相互作用を評価するための混栽実験を行った。
野外調査の結果、外来タンポポ種群の定着は遷移がある程度進んだイタドリ群落内に限定され、シロツメクサの定着は稀、フランスギクの火山荒原への定着は確認されなかった。発芽実験により、イタドリが春先の早い時期に発芽できるのに対して、外来3種の発芽時期は初夏頃であることが明らかになった。室内栽培では、イタドリと比較して、外来3種の生育が顕著に制限されたが、未侵入種も既侵入種と同程度に成長した。野外栽培では、外来3種のすべてにおいて、高温よりも乾燥が主要な制限要因であることが示唆された。混栽実験では、外来3種のイタドリへの影響が、イタドリの種内競争よりも軽微であった。
外来3種は在来種より発芽時期が遅く、火山荒原では生育が強く抑制されるため、小型個体のまま過酷な夏季を迎えることになる。そのため、これらの外来種の定着は、遷移が進行したイタドリ群落内に限定されていると考えられる。一方で、現時点で火山荒原に未侵入の外来種も、イタドリ群落内であれば生育できることが示唆されたことから、今後侵入種が増える可能性がある。また、イタドリ群落内での外来種の種数や個体数が増加した場合、生態系への影響が顕在化することが懸念される。