| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-011 (Poster presentation)
外来種の分布拡大は人為的な運搬によって加速しており、外来種の分布は市街地や道路等の人為的景観要素と関連することが知られている。一方で、体サイズが大きな種では、人為的な運搬よりも、その種の移動能力による分散が分布拡大の主軸になる。従って、このような種では人為的景観要素が分布拡大に寄与しているとは限らない。哺乳類においては、人為的景観への適応能力に種間差があるが、分布拡大にこのような適応能力は正の効果をもたらすのだろうか。本研究では、人為的景観への適応能力が高いアライグマを対象として、分布辺縁部における環境選択を分析することで、どのような環境が分布拡大に寄与しているのか、その中で人為的景観要素がもたらす影響について検討した。分析には、北海道において収集されている狩猟メッシュ(グリッド)単位の捕獲情報(2004-2022年度)を使用した。アライグマが新たに捕獲されるグリッドは、ほとんどが前年度にアライグマが捕獲されたグリッドの隣接グリッドだった。そこで、前年度に捕獲情報があったグリッドの隣接グリッドのうち、当該年度に捕獲努力があったグリッドにおける捕獲の有無を応答変数、土地被覆、気象要因、前年度に捕獲があった隣接グリッド数を説明変数、年をランダム切片とした一般化線形混合モデルを構築した。その結果、市街地や畑地の占有率、道路密度が高いグリッドでは新たに捕獲される確率が低かった。一方で、隣接グリッド数が多く、森林の占有率や冬季の気温が高く、積雪深が深いグリッドでは新たに捕獲される確率が高かった。係数値は隣接グリッド数で最も大きく、分布拡大には侵入機会の多さが強く影響することが示唆された。また、市街地や道路密度は、候補とした環境変数の中でも強い負の係数値を示した。人間活動が活発な景観要素は、人為的景観への適応能力を有する種においても、新たな侵入の障壁となっている可能性がある。