| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-018 (Poster presentation)
世界自然遺産に登録されている小笠原諸島では、侵略的外来植物の拡大により劣化した固有森林生態系の保全・修復を目的として、2009年から行政主導による継続的な外来植物対策が実施されてきた。その結果、多くの地域で在来植生の回復や天然更新の進行が確認されている。一方で、過去に台風やノヤギ等の外来動物による食害、人為的撹乱を繰り返し受けた地域では、種子供給源となる在来種の母樹が消失しており、外来植物対策後の天然更新のみでは植生回復が困難な状況にある。
小笠原諸島の無人島の一つである兄島は、その厳しい環境のため入植者が定住せず、比較的原生的な植生が残されている。この兄島南部の滝之浦エリアでは、継続的な撹乱により在来種で構成される海岸林(以下、在来海岸林)が衰退し、長らくIUCN「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されている常緑低木のシチヘンゲ(Lantana camara)が高密度に優占する植生となっていた。本種はツル状に地表を被覆して単一群落を形成し、空間的に占有することで在来種の加入・定着を阻害するため、生態系へ与える影響は大きい。
このため、本エリアでは、2010年より除草剤の樹幹注入や噴霧、機械を用いた刈払い等によってシチヘンゲ等の外来植物の駆除を行い、その跡地へモモタマナ(Terminalia catappa)やタコノキ(Pandanus boninensis) 等の在来海岸林構成種を播種・植栽し、植生回復を促進してきた。
これらの取り組みによる植生の変化は、2017年からUAVを用いた空中撮影により把握した。植栽した苗は7年以上の経過により樹冠を大きく拡大し、隣接する植栽苗と連続した林冠を形成する様子が確認された。また、エリア内の林冠合計面積は2017年の4,033.1 m2から2025年には8,631.5 m2へ増加し、2倍以上の拡大が確認された。
本発表では、継続的な撹乱を受け外来植物に侵略された海岸林の再生事例を紹介するとともに、これまでの保全の取組を整理し、UAV画像を用いた林冠回復状況の解析結果を報告する。