| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-020 (Poster presentation)
トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensis(以下本種)は関東地方に分布し,環境省RLでは絶滅危惧Ⅱ類,埼玉県RDBでは絶滅危惧ⅠB類に指定されている希少種である.近年は生息環境の悪化などが原因で個体数を急激減らしているが,さらに侵略的な外来種であるアライグマProcyon lotorによる食害が生息各地で発生し,極めて深刻な状況に追い込まれている.埼玉県日高市では,2024年に猟友会や野生動物管理コンサル等が協議会を組織してアライグマ防除を強化した.加えて希少種である本種が産卵する水路に,落ち枝や伐採竹と市販の農業資材などを活用し産卵環境の整備と食害防止対策をおこなった.水路は流路や水深確保のため堆積した泥の浚渫,さらに本種の産卵適所の創出に上下二段の簡易堰を造成した.下段堰は本種の産卵に適した緩やかな流速と10㎝程度の水深確保が目的である.増水時に流下した土砂は上段堰に堆積させ,泥流を低減させて下段堰の卵嚢を酸欠による死亡を防ぐことを狙った.アライグマによる食害対策として,市販されている丈夫な畦板で蓋をするように水路を覆い,アライグマの侵入を防ぐ対策を実施した.その結果,対策区周辺では2024年度にアライグマを18頭防除捕獲した.さらに2024年に産卵が見られない事態までに悪化した卵嚢数は,2025年は2023年並みの50卵嚢にまで回復した.対策区ではこれまで繰り返してアライグマが出没し,トレイルカメラ調査で両生類への捕食行動がたびたび確認されていたが,対策後は捕獲の効果からかアライグマの出没が減少しただけでなく,畦板敷設による食害防止対策で,産卵に集まった本種成体が捕食されずに産卵がおこなわれたと考えられる.近年は少雨による異常渇水や夏季の高温による本種の生息環境のさらなる悪化も個体数減少につながると考えられ,2025年単年ではなく,継続して安定した数の産卵ならび上陸後の成長につながる環境づくりを目指したい.