| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-027  (Poster presentation)

環境DNAによる繁殖期のオオサンショウウオモニタリング
Monitoring of Andrias japonicus during breeding season using environmental DNA

*苅部甚一(近畿大学), 高田涼(近畿大学), 池田誠慈(広島大学総合博物館), 清水則雄(広島大学総合博物館)
*Zinichi KARUBE(Kindai University), Ryo TAKATA(Kindai University), Seiji IKEDA(Hiroshima University Museum), Norio SHIMIZU(Hiroshima University Museum)

 日本の固有種,天然記念物であるオオサンショウウオ(Andrias japonicus)は生息環境の悪化により絶滅が危惧されている.従って,本種の生息環境の改善,保全が必要となるが,そのためには本種の生息状況の把握が必要不可欠である.近年,本種の分布調査に環境DNA分析が適用できることが報告されている.本種はある一定の生活圏内で繁殖や採餌などによって移動するため,その時々によって居場所は異なると考えられる.そのため,この環境DNAを用いた分布調査では本種の移動も考慮に入れる必要がある.そこで本研究では,本種が移動することが分かっている繁殖期に巣穴と繁殖巣穴を含む河川領域を対象として,環境DNAを用いて本種の移動状況を評価することを試みた.
 調査は,広島県東広島市内の河川にて,本種の巣穴と繁殖巣穴が確認されている領域を対象に繁殖期前後の2025年7月から9月の間に約1週間に一度の間隔で実施した.また, 11月にも一度行った.調査地点は領域内に数百m程度の間隔で12か所設置し,各地点で1Lを3回採水した.水試料は実験室に持ち帰りガラス繊維フィルターによる吸引ろ過を行った.その後,DNA抽出・精製を行い,リアルタイムPCR分析(TaqManプローブ法)を行った.
 各地点の検出結果を見ると,7月の調査開始時から繁殖時期の9月へと時間が進むにしたがって,調査領域の下流に位置する巣穴から上流側の繁殖巣穴の方向に本種の検出地点が移動する結果となった.この結果は,繁殖に向けて,下流側にいた本種個体が上流側に位置する繁殖巣穴に向けて徐々に移動している様子が反映されていると考えられる.また,繁殖巣穴がある地点では,本種個体が断続的に検出される結果となった.これは繁殖巣穴を占有するオス個体による継続的な利用を示唆している.これらの結果は,本研究のような頻度の高い調査によって,個体の分布だけでなく,その行動もとらえることが可能であることを示している.


日本生態学会