| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-028 (Poster presentation)
絶滅の恐れのある生物を保全するために、対象生物の基礎的な情報を活用した保全施策が構築・提案され、それが実践される場合は少なくない。そして、そのような取り組みが、対象生物の将来における個体数や遺伝的多様性の変動に与える影響を予測することが不可欠である。この将来予測の手法の1つとして、集団存続可能性分析(PVA)が挙げられる。しかし、この分析において用いられるパラメータ(例えば、移住パタン、初期の有効集団サイズ、あるいは環境収容力など)の取得に困難さが残ることは否めない。そこで本研究では、集団ゲノミクスおよび景観分析を採用し、これらパラメータの取得とそれに基づくPVAを実施した。富山県神通川の複数地点において採集した希少種ミナミスナヤツメLethenteron hattaiを対象として、MIG-seq法に基づくSNP解析を実施し、遺伝的集団構造、集団間の遺伝子流動パタン、そして各集団における有効集団サイズを推定した。また景観分析として、MaxEnt法に基づく生息適地評価を行い、各集団における環境収容力として設定した。これらパラメータを採用し、Vortexを用いてPVAを実施した。SNP解析の結果、神通川水系におけるミナミスナヤツメはメタ集団構造を形成しており、集団間の遺伝子流動パタンには偏りが存在することが明らかになった。そしてPVAの結果、将来の個体数は時間の経過とともに減少する傾向を示した。遺伝的多様性についても同様の傾向が示されたが、減少幅は小さく、50年後においても現在の95%程度の多様性が維持されることが推察された。メタ集団全体においても同様の傾向が示されたが、集団間の遺伝子流動パタンが均質化されると、将来の個体数と遺伝的多様性はいずれも低下幅が増大することが予測された。