| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-029 (Poster presentation)
自然環境の評価を実施する上で、対象地域の生態系における上位種となることが多い鳥類の調査は重要な役割を持つ。特に、鳥類の産卵・繁殖を把握することは優先的に保全すべき環境を明らかにするため重要な要素である。同調査中に時折得られる卵殻は、卵殻の取得地点付近の巣を利用した種の「繁殖を確認した」と判断する状況証拠に用いられる。しかし、得られた卵殻と巣との関係には位置関係以上の明確な裏付けがない場合も存在する。そこで、本研究では、鳥類調査の際に発見された卵殻を試料として、遺伝子分析による種の同定を試みた。
卵殻は、鳥類調査の際に採取し、周辺の営巣環境から、それぞれオオタカ、サシバ、フクロウ、シロチドリと推定されるものを試料とした。遺伝子分析による種の同定は、ミトコンドリアDNAのCOI領域を対象に行った。卵殻からのDNA抽出は、力丸ら (2010) を参考に0.5M EDTAによる脱灰工程とDNeasy Blood and Tissue Kit (QIAGEN) による精製工程によって行った。PCRは、Lijtmaer et al. (2012) を参考に検討を行った。卵殻から得られた配列情報は、BOLD SYSTEMSを用いて種の同定を行った。
卵殻試料を用いた遺伝子分析の結果、オオタカ、フクロウ、シロチドリと推定した卵殻は想定通りの種と同定された。特にオオタカについて、調査状況は種の特定を裏付ける明確な根拠が乏しく、巣の近くで採取した卵殻が唯一の手掛かりであった。このため、遺伝子分析の結果は、種同定の信頼性を大きく向上させたと考えられる。一方、サシバと推定した卵殻は、遺伝子分析の結果、サシバではなくカルガモと同定された。カルガモの卵殻がサシバの巣付近に存在した理由は不明であるが、調査時の状況から遺伝子分析を実施しなければ当該結果を示すことは困難であったと考える。
本研究により、鳥類調査における卵殻試料を用いた遺伝子分析による同定は、鳥類種の営巣・産卵を客観的に示す手法として利用可能であることが示唆された。