| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-032  (Poster presentation)

冷温帯スギ天然林における哺乳類種の多様度評価
Mammal species diversity in natural Japanese cedar forests distributed in cool-temperate regions

*江成(坂牧)はるか, 金山望, 江成広斗(山形大学農学部)
*Haruka ENARI, Nozomu KANAYAMA, Hiroto ENARI(Yamagata Univ.)

かつて本州を中心に分布していたスギやヒノキからなる針葉樹天然林は、木材需要の増加に伴い広く伐採され、のちに針葉樹人工林へと転換された。しかし、近年では林業従事者の減少により高齢化した針葉樹人工林が増加するとともに、“森林の多面的機能の促進”という国際規範のもと、針広混交林化が進められている林分もある。冷温帯林において唯一の常緑樹である針葉樹林は、冬期に哺乳類が風雪や捕食リスクを低減する上で重要な資源であることが示されつつある一方で、針葉樹天然林が多種共存に貢献する生態学的機能については評価されていない。そこで本研究では、当該地域に生息する中・大型哺乳類12種を対象に、スギ天然林、高齢スギ人工林、ブナが優占する広葉樹一次林における哺乳類種多様度を比較した。2022年から2023年の無積雪期(5月~11月)に、山形県最上地域および庄内地域において、各植生タイプの林分に自動撮影カメラを20台ずつ設置した。各植生タイプにおける哺乳類各種の撮影頻度をもとに、占有確率(ψ)に基づくShannonの多様度指数(Occupancy-based Shannon diversity)を算出した。さらに、これら哺乳類の餌資源として機能する液果および堅果結実種の樹木本数を比較した。その結果、春期(5~6月)、夏期(7~8月)、秋期(10~11月)のいずれの季節においても、広葉樹一次林の哺乳類種多様度が、他の2つの植生タイプよりも高い傾向を示した。一方、スギ人工林とスギ天然林の多様度は同程度となった。また、これら3つの植生タイプ間において、哺乳類種多様度の推定値は重なり、植生間の明確な差は支持されなかった。さらに、これら哺乳類の餌資源となりうる樹木の本数は、広葉樹林で最も多く、次いでスギ天然林、スギ人工林の順となった。これら本数の推定値は、スギ天然林とスギ人工林とで近く、両者の差は支持されなかった。これらの結果から、高齢スギ人工林は、スギ天然林の生物多様性保全機能を代替しうる可能性が示唆された。


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