| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-033 (Poster presentation)
背景 アツモリソウはかつては日本各地で多くの自生地があった。しかし、盗掘や植生遷移により現在は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」の指定種であり、環境省及び自生地が現存する自治体で絶滅危惧種となっている。札幌市内で現存する自生地は山岳地である。札幌市内の集団について近年の現状報告はない。本研究では2018年から5年間にわたる生育状況の観察結果を報告する。
調査地・調査方法(1) 調査地 札幌市南区定山渓の同一の登山道沿いで2か所を調査した(以下、SiteA、SiteBとする)。SiteAは岩場基部の急斜面で日当たりがよく、7月以降は高茎草本に被陰される。SiteBは沢沿いの林床で半日陰である。なお、SiteBは過去に記録がない地点である。(2)調査期間 2018年から2022年のいずれも6月(2018年のみ8月) 。(3)調査方法 自生地でアツモリソウを探索し、確認した株の位置情報、開花の有無、生育高、葉の枚数、最大葉長、食害の有無を記録した。
結果・考察 (1)個体数:2か所で総計40株を確認した。うち、総計11株が開花し、2株が5年間の途中で開花翌年に生育高が半分以下に小さくなり、その後2年連続で地上部が観察できなくなった。
SiteAでは毎年複数開花する1株があり、結実もしていることから、この集団の種子供給のソースとなっている可能性が高い。
SiteBは3株を確認し、5年間で開花はなかった。しかし、継続して生育高が20~30cm前後で推移し続け、毎年、栄養成長していることを確認した。生育高だけ見るとSiteA の開花株に匹敵する。このことはTakahashi (2025)が薄暗い日照条件下では生育高が高くなる傾向を指摘していることと関係があると考えられる。
対象とした集団について過去の記録がなく、株数がどの程度減少したか絶滅リスクの検証はできない。今後も定期的に観察を続ける必要があるだろう。また、今後、道内の他の自生地との生育状況の比較や遺伝的な解析も必要である。