| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-035 (Poster presentation)
風力発電は、脱炭素社会の実現に向けて不可欠な再生可能エネルギーとして世界各地で導入が進められている。一方で、鳥類やコウモリなどの飛翔動物に対しては、衝突事故のみならず、生息地の放棄や移動障壁といった間接的影響も指摘され多くの研究がなされてきた。しかし、これまでの影響評価は、主に単一風車あるいは個別の風車施設単位で実施されることが多かった。近年では、風車の導入が急速にすすみ、広域にわたり高密度で配置される計画が増えており、複数の風車が同時に存在することによる累積的影響を把握することが重要な課題となっている。本発表では、風車数および風車施設数の増加がハクチョウ類の飛翔行動および空間利用に及ぼす影響を定量的に評価した。2021年から2024年にかけて75個体のハクチョウ類にGPS発信機を装着し、飛翔時の測位間隔を1分として高頻度の飛翔軌跡データを取得した。得られた飛翔軌跡を基に、各年の風車密度データや土地利用データを用いて、個体の移動選択を推定する意思決定モデルを構築し、周辺の風車密度との関係を明らかにした。その結果、半径約500m以内に1~3基の風車が存在するだけで、ハクチョウは風車周辺空間を顕著に回避する傾向が確認された。さらに、風車数の増加に伴い回避行動は累積的に強まり、飛翔経路が大きく迂回する可能性が示唆された。これらの結果は、少数の風車であっても空間利用に強い制約を与え得ること、そして広域スケールでの累積的影響を考慮した風車の配置計画の必要性を示唆する。