| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-036  (Poster presentation)

ヘビ類の皮膚・臭腺VOCはどう異なるか
How do VOCs from snake skin and scent glands differ?

*秋元洋希, 細将貴(早稲田大学)
*Hiroki AKIMOTO, Masaki HOSO(Waseda Univ.)

 生物が発する揮発性有機化合物(VOC)は、種内や種間の相互作用において多様な役割を担う。そのため、異なる役割に対応した異なる組成のVOCを放出するシステムが同一個体内に併存することは珍しくない。ヘビ類には、体表から日常的に放出され、主に種内コミュニケーションに利用される体臭と、主に天敵に対する被食防御のために放出される臭腺分泌物という2つのVOCシステムがある。受容者と機能が異なるこれらのVOCシステムは、それぞれ異なる選択圧のもとで進化してきた可能性がある。そこで本研究では、これら2つのVOC組成を種内・種間で比較し、VOCシステムの進化過程を推測した。
 分析対象となるVOCは、ヘビの体表のスワブ擦過物および臭腺分泌物からヘッドスペース固相マイクロ抽出法(HS-SPME)で捕集した。VOCの分析にはGC-MSを用いた。
 解析の結果、種間のVOC組成非類似度と遺伝的距離は、体臭では相関を示さないものの、臭腺分泌物では正の相関を示した。さらに、同所的に生息するアオダイショウとシマヘビを用いて多数の個体を分析したところ、いずれのVOC組成も種内に変異を含みつつ種間で分離することが明らかとなった。このことから、体臭のVOC組成は個体差や環境条件の影響を受けやすい可能性がある一方で、臭腺分泌物のVOC組成は系統シグナルを反映すると考えられた。本結果は、機能が異なるVOCシステムは必ずしも同じ進化過程を経ないことを示すものである。本発表ではさらに、分布や生態の異なる種を含めた広範な種間比較から、VOCシステムの進化を駆動する要因についてより深く議論する。


日本生態学会