| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-037 (Poster presentation)
森林は陸域における主要な生物多様性の基盤であり、木材生産に加えて、生物多様性を通じた多様な生態系サービスを人間社会に提供している。従来、生物多様性の保全は主に天然林に依存し、人工林は木材生産を担う場と捉えられてきた。しかし近年では、施業が行われる森林においても生物の生息地としての機能が認識されつつあり、生物多様性に寄与しうる施業林の特徴や環境を、より具体的に明らかにしていく必要がある。また、森林の生物多様性評価に関する研究はこれまでにも数多く行われてきたが、その多くは植物など特定の分類群に着目したものであり、多分類群を横断した包括的な評価は依然として限られている。加えて、生物多様性調査には高い専門性や労力を要する場合が多く、森林施業や企業活動への実装を見据えると、簡易かつ実用的な評価手法の確立が重要な課題となっている。
本研究は、施業林および天然林を対象に、多分類群の生物多様性を定量的に評価し、異なる森林タイプにおける生物多様性の特徴を明らかにすることを目的とした。そのため、住友林業が北海道紋別市に所有する4タイプの森林(トドマツ人工林、カラマツ人工林、天然林、河畔林)に固定調査区を設置した。加えて、日本の森林では林床ササが生物多様性に強く関与することから、林床ササ群集の状況が異なるプロットを各森林タイプに設定した。今年度より、ドローンによるリモートセンシングやAI解析技術、環境DNAなどの新技術を複合的に活用し、維管束植物、真菌、節足動物、鳥類、中・大型哺乳類といった多分類群の生物多様性推定を開始している。今後は、炭素固定、栄養循環、気候緩和に関連する生態系機能も測定し、生物多様性によって支えられる森林の多面的な価値を総合的に評価する。本発表では、以上の取り組みの概要と予備的成果を紹介する。