| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-040 (Poster presentation)
近年、治水対策として河道掘削等の改変が進んでいるが、流域内の生物多様性保全との両立も強く求められている。治水対策と水系全体の生物多様性の両立を図るためには、重視する場所を区分けして、流域を1つの保全単位と捉えることが重要である。一方、生物種により流域内の地理的遺伝構造が異なることが予測されるため、区分けの指針策定には、保全対象種の地理的遺伝構造と流域や環境との関係性を明らかにする必要がある。本研究では、2種の水生植物を対象に流域と局所的な物理環境等が地理的遺伝構造にどのような影響があるかについて検討した。利根川水系で採取したササバモ(81個体)、九頭竜川水系で採集したツルヨシ(71個体)をMIG-seq法による遺伝解析に供した。半径約100m以内を1地点と設定し、地点ごとに環境要素として流速、水深、泥厚などを測定した。個体ないし集団の遺伝的組成と環境の関係性を明らかにするために集団間の環境要因を比較した。MIG-seqから得られたリードから、ササバモでは最終的に811SNPs、ツルヨシからは403SNPsが得られた。ササバモでは、渡良瀬川周辺と大谷川上流がそれぞれ他の地点との間に遺伝的差異が見られた。渡良瀬川周辺は他の地点と地理的に離れている一方、大谷川上流は他の地点に包含される位置にあることから、地理的位置関係と遺伝的構造は単純な関係性にはない可能性が示唆された。ツルヨシでは、九頭竜川水系内で、地理的距離が近い地点間でも流路を共有していない場合、遺伝的な類似性は低いことが示された。加えて、支川よりも、支川が合流する本川において遺伝的多様性が高いことが示されたことから、河川の流路に沿って個体ないし種子の分散が生じている可能性が考えられた。また、2種ともに環境要素と遺伝的構造の間に関係性は確認できなかった。