| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042  (Poster presentation)

茨城県北部の老齢天然林における樹木のマイクロハビタット;樹種とサイズの影響
Effects of tree size and species on the occurrence of tree-related microhabitats in a old secondary forest in northern Ibaraki

*山下聡, 鳥居正人, 升屋勇人, 服部友香子, 柴田銃江, 小黒芳生(森林総合研究所)
*Satoshi YAMASHITA, Masato TORII, Hayato MASUYA, Yukako HATTORI, Mitsue SHIBATA, Michio OGURO(FFPRI)

樹木に形成される樹洞や樹脂流出などは,鳥や昆虫,微生物等の様々な生物によって利用されている。これらは近年,樹木のマイクロハビタット(Tree Microhabitat;以下TreM)と総称され,森林における生物多様性の維持における役割が注目されている。森林の生物多様性維持機能の評価を行う上で,どのような種類のTreMが,どのような特徴を持つ樹木に認められるのかといった基礎的な情報が必要となるが,このような情報は日本においてほとんど得られていない。そこで本研究では,茨城県北部の老齢天然林(小川試験地)において,樹種とサイズがTreMの有無に及ぼす影響を明らかにするために,野外調査を行った。林内に設置された6haプロット内で,胸高直径10㎝以上の全ての生立木の樹幹を対象にTreMの有無と種類を記録した。記録したTreMは16種類で,樹洞や樹脂流出,枝枯れなどの主として樹木病害に関わるものを記録した。TreMの種類ごとに,出現の有無に対する胸高直径及び樹種の影響を二項分布モデルにより解析した。調査の結果,45種2402本の樹幹のうち,976本の樹幹にTreMが認められ,その種類は,枝折れが569本と最も多く,空洞,根腐れ,樹幹の傷がこれに続いた。樹種ごとにみると,ハクウンボク,サワシバ,アカシデ,オオモミジは樹幹の本数から期待されるよりもTreMの出現頻度が少なかった。TreMの種類ごとにみると,枝枯れでは,樹種の効果は認められず,胸高直径が大きいほど出現しやすかった。また,空洞や根腐れ,枝折れなどでは,樹種の効果に加えて胸高直径が大きいほど出現しやすかった。一方,溝腐れや材の露出では,胸高直径の影響は認められず,樹種の効果のみが認められた。このように樹種とサイズの影響はTreMの種類によって異なったものの,全体としては森林内のTreMを維持するうえで大径木が重要であることが示された。


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