| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-046 (Poster presentation)
生物多様性の損失に対する危機感と回復への要請が高まるにつれ、その定量的評価の必要性がより高まっている。なかでも、ある地域内における対象種群の種多様性に着目した場合には、α、β、γ多様性の3つの観点から評価を行うことが状態の把握だけでなく時間的変動や地域間の多様性の違いを知る上でも重要となる。日本の国土面積の約3分の2を占める森林を構成する樹木についても、そのような定量的な多様性評価が求められている。
そこで本研究では、約20年間4期にわたって蓄積された林野庁の森林生態系多様性基礎調査のデータを利用し、都道府県内および全国森林計画の広域流域内における樹木種のα、β、γ多様性の推定を行った。推定にあたっては、標本網羅率に基づく標準化手法iNEXTの拡張であるiNEXT.beta3Dを用いて、次数q=0,1,2のHill数(q=0の場合種数)を指標として、未観測の種を考慮したα、β、γ種多様性の漸近推定値を求めた。さらに、得られた推定値を状態空間モデルで解析することで、観測と推定の誤差変動を除いた多様性の時間トレンドを評価した。
q=0の結果に着目すると、天然林では、胸高直径18㎝以上の種の地域レベルγ多様性は全国的に1期から4期で概ね横ばい、α多様性は上昇傾向を示した。γとαの比として算出されるβ多様性の推定値はこれらの傾向と連動して多くの地域で低下しており、全国的な均質化傾向がある可能性が明らかとなった。この結果は2つの地域区分双方で共通しており、特にβ多様性の低下傾向は日本全国をひとまとめとして年単位のトレンド推定を行った場合にも一貫して見られた。一方で人工林では、これらの種のγ多様性、α多様性はともに上昇傾向を示していた。
他のqの次数や胸高直径区分についての結果では異なる傾向が見られたことから、これらの違いにも着目することで変動の実態をより詳細に把握できる可能性も示唆された。