| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-047 (Poster presentation)
近年の気候変動や海底資源開発といった環境変動・環境撹乱は深海底生生物にも甚大な影響を及ぼすことが懸念されている。深海底生生物が海洋環境の変化に対してどのような応答を示すのかを明らかにすることは、将来的な環境変動の影響評価を行う上で喫緊の課題である。
本研究では、遠隔操作型無人探査機(ROV)の映像データから抽出した各分類群の生物量を応答変数、気候要因(水温と流速の指標)と底質要因(堆積物の有機物量および粒度)を説明変数、分類群名をランダム効果とした階層ベイズモデルを構築した。生物データにはゼロ観測地点が多く含まれていたため、zero-inflated Poisson分布を仮定した。
構築した階層ベイズモデルにより、深海底生生物27分類群の環境応答特性を明らかにした。推定された係数の95%信頼区間が0と重ならない分類群の数は、粒度は15分類群、渦度は13分類群、有機物指標は12分類群、水温は10分類群であった。本研究の対象底生生物では、半数以上の分類群で気候要因と底質環境の複合的な要因で分布が規定されており、気候要因のみのモデルでは予測力が劣ることが示された。本研究では、映像データから抽出された深海底生生物情報を活用し、種ごとの環境応答を統計的にモデル化する枠組みを提示した。今後、このモデルを応用することで、将来の気候変動や海底環境変化の下での深海底生生物群集の時空間分布予測が可能となり、深海生態系の変動予測と保全戦略の立案に資することが期待される。