| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-049 (Poster presentation)
我々は、自然が人間に与える影響について音をテーマに研究を行っており、その一環として人工林における野生生物、季節性の渡り鳥の生態観察を実施している。近年、生態系モニタリングにおいてAI技術を用いた音声認識システムの普及が進んでいるものの、従来の視聴覚による調査手法との比較検証は十分になされていない現状がある。本研究では、人工林における鳥類相を把握するため、AI鳥識別システムBirdNETと、ラインセンサス法を併行して実施し、両者の確認種の一致度を評価した。BirdNETは、コーネル大学鳥類学研究所とケムニッツ工科大学が共同開発したアプリケーションで、AIを用いて鳥の鳴き声を解析し、種の同定を行うツールである。一方、ラインセンサス法は、調査者が定められた経路に沿って歩行しながら、視認または聴取した鳥類の種・個体数・位置を記録する手法で、環境調査で幅広く活用されている。滋賀県草津市に設置した水辺や草地、樹林を有した約1万3000m²の人工林「共存の森」おいて実施した。WILDLIFE ACOUSTICS社のSong Meter Mini Bat 2を用いて複数地点で音声を収録し、BirdNETによる解析を行うと同時に、熟練調査員によるラインセンサス法を実施して、両者の確認種の一致度を評価した。その結果、BirdNETはラインセンサス法で記録された主要種の多くを検出することに成功し、特にヒヨドリ、ハシブトガラス、シジュウカラ、スズメ、メジロなど、特徴的な鳴き声を持つ種において高い一致率を示した。この結果は、AIによる自動識別を複数地点の長期録音データに適用する事で、広範囲な時間・空間での鳥類生態系モニタリングを可能にすることを示唆している。今後は季節変化を含む長期的な調査を継続し、識別精度の向上を図ることで、人工林における鳥類相の把握をより簡便に行う無人モニタリング手法の確立を目指すとともに、将来の生物多様性保全活動に活用していく。