| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-054  (Poster presentation)

種間相互作用と応答多様性が生態系の安定性に及ぼす影響
Effects of interspecific interactions and response diversity on ecosystem stability

*岩下源, 川田尚平, 山道真人(国立遺伝学研究所)
*Gen IWASHITA, Shohei KAWATA, Masato YAMAMICHI(National Institute of Genetics)

近年、生態系機能を安定させるメカニズムとして、応答多様性(response diversity)が注目されている。応答多様性とは、環境変動に対する種の反応の違いのことである。これにより各種の個体数変動に非同期が生じ、互いに相殺されることで、同じ機能群に属する種の総個体数の変動が小さくなる。これまでの研究によって、競争や捕食・被食といった負の相互作用で構成された群集では、応答多様性が増加するにつれて生態系機能が安定化するという正の関係が存在することが明らかになってきた。

それでは、相利共生や促進などの正の相互作用のもとでも、応答多様性が増えるにつれて生態系機能が安定化されるのだろうか。競争や捕食などの負の相互作用は個体群動態の非同期を生み出すため、応答多様性によって生じる非同期と同じ方向に作用する。一方、相利共生や促進のような正の相互作用では、個体群動態が同期しやすくなるため、応答多様性とは逆方向に働くことになる。そのため、相利共生系では応答多様性と生態系機能の安定性の関係が変化する可能性がある。しかし、相利共生系と競争系を同一の枠組みで扱って、応答多様性と安定性の関係を調べた研究はほとんどなかった。

そこで本研究では、一般化ロトカ–ヴォルテラ方程式の数値計算と、平衡点近傍の摂動を記述するオルンシュタイン=ウーレンベック過程の近似によって、競争系と相利共生系において、応答多様性が生態系機能の安定性に与える影響を調べた。いずれの相互作用においても、応答多様性が増加するにつれて総個体数の変動が安定化することが明らかになった。競争系では、応答多様性は種間の非同期性を通じて生態系機能を安定化させた。一方、相利共生系では、非同期性の増大よりも、各種の変動を平均的に小さくする経路が安定化に強く寄与することが示された。これは、相利共生系では応答多様性が安定性に及ぼす経路が競争系とは質的に異なることを示唆している。


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