| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-060 (Poster presentation)
倒木更新は冷温帯のマツ科樹木など不可欠な更新様式である。これらの樹種は外生菌根性であるため、外生菌根菌(以降、ECM菌)を介して栄養獲得すると考えられるが、倒木上の木質で無機栄養に乏しい環境では、分布するECM菌群集やそれらが菌根で発揮する栄養獲得機能は変化すると予測される。本研究では倒木上と土壌における菌根表面の細胞外酵素活性とECM菌群集を分析した。樹高100㎝前後の土壌まで根が伸長した倒木更新エゾマツ5個体から、菌根175根端を倒木上および土壌からそれぞれ採取した。各菌根について探索タイプ(Agerer 2001)を識別するとともに、根端部の外生菌根の細胞外分解酵素活性と基質のC/N比、pH、無機態窒素量を測定した。さらに、核DNA-ITS領域の塩基配列からECM菌を属レベルまで同定した。加えて、倒木由来の環境要因が各酵素活性に及ぼす影響についてパス解析を用いて解析し、主成分分析により各ECM菌分類群の持つ各種酵素活性の特徴を比較した。
その結果、栄養環境は倒木上のほうが土壌よりも有意にpHおよび硝酸態窒素量が低く、C/N比が高かった。倒木上の共生ECM菌組成は、菌糸が短いContact型の菌根形態を持ち、競争型の菌として知られるTylospora 属の優占度が顕著に高かった。機能面でも、炭素分解系の酵素であるβ-グルコシダーゼ(BG)とラッカーゼ(LCC)の活性が倒木上で高い傾向を示した。パス解析では、炭素分解系の酵素活性に対して、倒木上ではContact型の割合が高いことでBGとLCCの活性が高まる傾向が示され、PCAでも倒木上で優占したTylospora 属が他属に比べてBGとLCCの活性が高いことが示された。以上より、倒木の基質条件下では限られた分類群が優占したECM菌群集が形成されていた。また、それら優占種が支配的に影響することで炭素分解系の酵素活性が高まっていた。これらの酵素活性の上昇は、難分解性有機物に結合した窒素など限られた栄養元素の利用可能性を高め、更新稚樹の生存および初期成長を支えていることが示唆された。