| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-065 (Poster presentation)
Epichloë 属菌類は、イネ科植物の地上部に共生する子嚢菌門バッカクキン科の菌類であり、宿主植物に病原菌への抵抗性を付与する。培養条件下での試験では、Epichloëが植物病原菌の成長に負の影響を及ぼすことが確認されているが、野外状況下におけるこの現象に関する報告は少ない。そこで本研究では、野外においてEpichloëが植物病原菌に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、アオカモジグサとカモジグサを対象に病徴葉と無病徴葉でのEpichloëの出現頻度の比較および病徴とEpichloëの出現が菌類群集の多様性に及ぼす影響を評価した。
サンプリングは2020年6月に京都市の鴨川沿岸で実施し、アオカモジグサとカモジグサから生葉と老衰葉の病徴葉と無病徴葉を計219枚採取した。葉の葉鞘からDNAを抽出し、アンプリコンシーケンスにより、菌類ITS1領域の配列を決定した。得られた配列からシーケンスエラーを除去し、97%の相同性閾値で操作的分類群(OTU)にまとめた。各OTUについてデータベースと比較することで分類群と機能群を推定した。
その結果、1331菌類OTUが検出された。Epichloëの出現頻度を比較すると、アオカモジグサでは無病徴葉よりも病徴葉でEpichloëが有意に多く検出された。一方でカモジグサでは、病徴はEpichloëの出現に有意な影響を与えなかった。OTU数を比較すると、アオカモジグサ、カモジグサともに病徴葉で無病徴葉よりも有意に高くなったが、いずれもEpichloëの有意な影響はなかった。OTU 組成は、アオカモジグサ、カモジグサともにEpichloëの出現と病徴の有無で有意に異なった。さらに、Epichloëが出現しなかった病徴葉で有意に高頻度で出現する植物病原菌も認められた。以上から、Epichloëの出現頻度は病徴の有無によって異なり、そのパターンは宿主によっても異なることが示唆され、Epichloëの出現下で特定の植物病原菌が減少すること、病徴葉での植物病原菌の応答パターンがEpichloëの出現によって異なる可能性が示された。