| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-066  (Poster presentation)

シカ過採食下の草地におけるシカ排除柵の設置に伴う土壌微生物相の初期変動
Initial changes in soil microbial communities following installation of deer exclusion fences

*松岡俊将(京都大学), 杉山賢子(京都大学), 古田晏寿(京都大学), 秦野悠貴(京都大学), 中山理智(岡山大学), 中濱直之(兵庫県立大学), 永野博彦(新潟大学), 小林和也(京都大学)
*Shunsuke MATSUOKA(Kyoto Univ.), Yoriko SUGIYAMA(Kyoto Univ.), Anju FURUTA(Kyoto Univ.), Yuki HATANO(Kyoto Univ.), Masataka NAKAYAMA(Okayama Univ.), Naoyuki NAKAHAMA(University of Hyogo), Hirohiko NAGANO(Niigata Univ.), Kazuya KOBAYASHI(Kyoto Univ.)

シカの過採食による下層植生の衰退(消失や少数のシカ不嗜好性植物種による優占)に対し、シカ排除柵の設置により、植生の保全や復元が行われている。しかし、従来のシカ排除柵を用いた研究では、調査対象は植物に限られていることが多く、植生回復に伴う他の生物群の多様性の変化を評価した例は限られている。本研究は、シカ過採食により衰退した植生の回復に伴い土壌微生物の群集構造(種数と種組成)がどのように変化するのかを評価することを目的とした。
研究は京都大学芦生研究林内の草地サイトで行った。同サイトでは、シカ不嗜好性植物であるイワヒメワラビ1種のみが優占している。2024年10月、調査地に9m四方のシカ排除柵を5基設置した。それぞれの柵内を4区画に等分し、うち3区画はイワヒメワラビを根から除去し(処理区)、残り1区画は除去処理を加えなかった(対象区)。2024年の10月、2025年の4月、7月、10月の4回、5基の柵の4区画それぞれから、土壌コア(表層10cm、200cc)を採集した。土壌からDNA抽出とアンプリコンシーケンスを行うことで、細菌と菌類の群集を評価した。
処理区の植生は2025年7月以降にイグサを中心に草本植物の種数が増加し始めたが、対象区はイワヒメワラビのみが優占していた。土壌微生物は、細菌は5083 ASV、菌類は3332 ASVが検出された。微生物の群集構造を処理区と対象区で比較すると、ASV数は菌類のみが処理区で低下し、ASV組成は細菌と菌類のどちらも処理により異なっていた。さらに菌類では、処理により群集組成の時間変動パターンが変化し、処理区では対象区に比べて柵間での組成のばらつきが大きくなっていた。これらの結果は、シカ排除柵設置による植生回復に伴い、土壌微生物の群集構造も変化すること、特に菌類では種組成の空間的な異質性が高まることでサイト全体での多様性が高まる可能性を示している。


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