| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-067 (Poster presentation)
変形菌にはバクテリア食の種が多く存在するが,糸状菌とバクテリアはニッチが重複しているため,バクテリアを餌とする変形菌は当然のことながら糸状菌と同所的に存在していると考えられる.このことは,変形菌が,その生育環境において常に糸状菌の発する揮発性物質に晒されていることを意味している.糸状菌の揮発性物質が変形菌に及ぼす影響についての知見は,基質中での変形菌の生存に関わる基礎的かつ重要な知見であるにも関わらず,ほとんど研究がなされてこなかった.そこで本研究では,糸状菌が一般的に生産する揮発成分であるマツタケオールに対する変形菌の1種ススホコリおよび2種の木材腐朽菌(ウスヒラタケとシイタケ)の感受性試験を実施した.シャーレの底に湿らせた濾紙を置き,ススホコリを接種した後に,各濃度のマツタケオールまたは水(対照区)を含んだ餌を与え,餌に対するススホコリの反応を観察する試験を0(対照区), 100, 1000, 10000ppmの各濃度で1回,2000,3000,5000ppmの各濃度で2回, それぞれ5反復ずつ実施した.変形菌の忌避反応は,変形体が餌を覆う割合で評価し,得られた結果をDunnettの多重比較検定により解析した.またマツタケオールを滴下した培地上に,木材腐朽菌の菌糸体片を接種し,菌糸の伸長量を測定,同様の解析を行った.以上の結果,ススホコリは2000ppm以上で有意に忌避したが,ウスヒラタケでは100ppm,シイタケでは1000ppm以上で有意に抑制された.本試験の結果から,変形菌が忌避行動を示さない100−1000ppmで,木材腐朽菌の菌糸伸長を抑制されることが明らかとなった.したがって変形菌は糸状菌と同所的に存在するために,高濃度のマツタケオールに対し高い耐性を獲得した可能性がある.