| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-068  (Poster presentation)

微気候モデルENVI-metを用いた夏の都市部におけるエキノコックス虫卵の生存適地予測
Modeling the distribution of survivable micro-climates for Echinococcus multilocularis eggs in urban summer

*森健介(兵庫県立大学), 八十島裕(Pacific Spatial Solutions)
*Kensuke MORI(University of Hyogo), Yutaka YASOSHIMA(Pacific Spatial Solutions)

野生動物が媒介する人獣共通感染症は深刻な公衆衛生上の脅威である。ダニをベクターとして感染するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)や日本紅斑熱、キツネや野犬・ネズミを宿主とするエキノコックス症、ナメクジとネズミを宿主とする広東住血線虫など、危険な感染症が人の居住域近傍に潜伏している。 近年、都市部における生物多様性促進政策により、公園や緑地の整備が進められている。 しかし、これらの緑地空間がベクター(媒介生物)や自然宿主の生息地を提供し、人口密集地に人獣共通感染症を導入してしまうことがある。  
これら人獣共通感染症を引き起こす寄生虫や宿主、ベクターには小さい空間スケールでの環境条件(マイクロハビタット)が重要な役割を果たす。 例えばエキノコックスの虫卵は高温や乾燥に弱く、夏には植生がもたらす小さな日陰や水場の湿気などが重要になると考えられる そこで本研究では、都市空間の微気候シミュレーションソフトウェアENVI-metを用いて、エキノコックスの懸念がある北海道、札幌における微気候の空間的パターンを予測した。
シミュレーションの結果、地表付近の湿度や気温には大きな差異は予測されなかったものの、地表面温度は狭い空間内でも顕著な差異が生じることが予測された。これは、真夏日においても寄生虫やベクターが相対的に涼しい公園などの植生をマイクロハビタットとして利用し、都市内部に感染リスクのホットスポットを形成する可能性を示唆している。
生物多様性が重視される今、都市部での野生生物との関係を考える上でこういった都市部でのマイクロハビタットや微気候の把握と、それによる害虫や感染症リスクのような生物多様性の負の側面への対応は重要な課題である。 ENVI-metのような微気候シミュレーションモデルは、リスクのホットスポットを予測し対策を立てる上で重要なツールとなり得る。


日本生態学会