| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-071 (Poster presentation)
外生菌根菌 (以下、菌根菌) は植物の根に感染し、宿主と相利共生を行う菌類の機能群である。菌根共生はブナ科・マツ科など温帯・冷温帯林の優占樹種の生育に不可欠であり、菌根菌の群集組成やその決定要因は様々な地域・空間スケールで調査されている。
ある菌根菌が群集に加入するためには、林への分散と、樹木根への感染の2つの過程を経る必要がある。しかし、これまでの研究では、各プロセスが群集形成をどの程度制限するのかといった、2つのプロセスを分離しての評価は十分にされていない。
本研究では、土壌から樹木根への感染制限の評価を目的に、土壌中と樹木根中の菌根菌相の比較を行った。調査は北海道東部に位置する京都大学北海道研究林標茶区で行った。林内に20×20 mの調査区を10個設置し、各調査区から100 ml (直径5 cm, 5 cm深) の土壌コアを格子点状に25個ずつ採取した。コア中の土壌と菌根根端に対し菌類rDNAのITS1領域の配列解読を行い、得られた配列を97%の相同性閾値で操作的分類群 (OTU) 分けすることで、土壌と樹木根それぞれに対し菌根菌OTU組成のデータを得た。
10調査区の土壌から合計789 OTUの菌根菌が検出され、そのうち55%にあたる436 OTUが菌根根端からも得られた。土壌コア単位で見ても、土壌から得られたOTUのうち4-6割程度が、同一コア中の菌根根端と共有されており、総じて、土壌中の菌根菌のうち半数程度が樹木根に感染していた。菌根菌OTUごとに土壌と菌根根端中での出現位置を比較したところ、OTUによって樹木根への感染パターンは異なっていた。これらの結果は、土壌から根への感染の過程で菌根菌群集に何らかの選択がかかっていること、つまり樹木根中の菌根菌群集組成を決める要因として感染制限が生じていること、感染制限の強さは種により異なることを示唆している。今後、感染制限に関わる要因を明らかにしていくことで、菌根菌群集の形成過程の解明が進むことが期待される。