| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-073  (Poster presentation)

霧島山栗野岳の照葉樹老齢林における標高勾配に沿った植物多様性の変化
Changes in plant diversity along an elevational gradient in old-growth evergreen forests in Mt. Kurinodake

*竹口輝(鹿児島大学), 田金秀一郎(鹿児島大学博物館), 川西基博(鹿児島大学), 渡部俊太郎(鹿児島大学)
*Akira TAKEGUCHI(Kagoshima University), Shuichiro TAGANE(Kagoshima University Museum), Motohiro KAWANISHI(Kagoshima University), Shuntaro WATANABE(Kagoshima University)

標高勾配は比較的狭い空間スケールの中で気温や水分条件が連続的に変化する環境勾配であり、植物多様性に大きな影響を与える。西南日本では、山地標高に沿った照葉樹林から落葉広葉樹林への変化の中にこうした影響の一端をみることができ、その様相は主に植生図等を用いて定性的に把握されてきた。一方で、標高に沿った植物多様性の量的な変化パターンを把握し、種ごとの分布に還元して理解する試みは今なお限定的である。鹿児島県と宮崎県の県境に位置する栗野岳の北側斜面には、比較的撹乱の少ない極相林に近い照葉樹林が標高分布の上限付近まで分布し、その上方にブナやミズナラが分布する植生がみられる。このような景観は、標高の変化に伴う植生の変化を種多様性と対応づけて検討できる貴重なモデルケースとなる可能性がある。そこで本研究では栗野岳の標高に沿った維管束植物の多様性変化パターンを把握するとともにそれらにどのような植物が寄与しているかを明らかにすることを目的とした。
研究の結果、群集組成は標高帯間で有意に異なり、低標高ではタブノキやスダジイなどの常緑樹が優占し、高標高ではモミやヒメシャラなどの冷温帯樹が増加する様子がみられた。一方で、ヤブツバキやウラジロガシのように広い標高域に分布する種もみられ、種の入れ替わりが標高に沿って連続的に生じていることが示された。種数は標高に沿って増加する傾向を示したが、標高800m付近で一時的な低下が認められる二峰型を示した。これにはタラヨウ、サンゴジュなどの常緑樹の出現頻度の減少が大きく関係しており、対照的にブナ、コハウチワカエデなどの落葉樹は900m以上に分布する傾向が見られた。このことは、標高800m付近が常緑樹の減少に対し落葉樹の増加が追いつかない標高帯となっており、移行帯の多様性変化が種分布の重なりだけでなく、各種の分布制限や機能群ごとの応答の違いによって形成される可能性を示唆している。


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