| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-074 (Poster presentation)
林業をとりまく情勢の変化等に伴う人工林の管理放棄が引き起こす、林床の生物多様性の低下が懸念されている。実際に、最近出版されたメタ解析の結果は間伐が人工林の林床植生や実生・若木の多様性に有意な正の影響を与えることを示している。しかし、メタ解析の結果は出版バイアス等の影響を受けている可能性もあり、実データに基づく大規模解析によるさらなる検証も重要である。そこで本研究では林野庁が実施・公開している第四回森林生態系多様性基礎調査の結果に基づき、人工林の管理放棄(間伐遅れ)が林床植生の種数に与える影響を検証した。比較のために自然林も含め、0.04haの円形調査区内が単一林分で構成される9746プロットを解析対象とした。管理放棄は相対幹距比に基づいて判定し、森林を自然林、管理された人工林、管理放棄人工林、その他に分類した。上層の森林の状況やササ類の優占の有無、気候等を説明変数とし、林床植生の種数を応答変数とした機械学習モデルを作成した。その結果、重要な説明変数は緯度経度に加えて、ササ類の優占の有無、人工林かどうか、高木・亜高木層の合計被度、胸高断面積合計等であった。年平均気温と林床植生種数の関係を4つの森林タイプ間で比較すると、中程度の温度帯では林床植生種数は管理放棄人工林で他の森林タイプより有意に高かったが、ササ類が優占していない調査区に限ると管理された人工林で有意に高かった。この結果は管理放棄人工林では胸高断面積合計の大きさが林床植生種数に負の影響を与えている一方で、ササ類の優占確率が低いこと、亜高木層の被度が低いために高木・亜高木層の合計被度もあまり高くないことがいずれも正の影響を与えていることによって生じていると考えられた。以上のことは人工林の管理放棄がササ類の優占等を介して林床植生種数に複雑な影響を与えており、必ずしも林床植生種数を低下させないことを示している。