| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-078 (Poster presentation)
いまの気温上昇はGHG対策しだいであるが、中程度のシナリオでは、来世紀まで続く(IPCC, AR6)。本研究では、温暖化が東アジアの大生態系(群系)の地理分布および構造・機能特性に与える影響を、数理モデルによるシミュレ-ションで評価する。▶地理分布は、吉良による座標軸を用い、温量示数(WI, CI)による温度気候帯の閾値を日本列島と大陸間で変えた。乾湿度クラスは変化しないとした.気候資料は気象庁の公開資料。年平均気温の経年変化率、および月別平年値の最高値と最低値を目的変数とし、観測点の緯度、経度、標高を説明変数として得た重回帰分析係数により温量示数を推定した。解析対象は、日本列島と緯度30~47度で東経120度以東の大陸。それらを二次メッシュ(約10km四方)に細分し、中央地点の緯度、経度および標高から温量指数を算出した。なお,本手法での分布図と実測値による分布図との比較から、その有効性を確認した。▶地理分布の変化からは、大陸域では暖温帯落葉広葉樹林気候帯(A帯)が急速に拡大する。これは、冬期の寒さが厳しい大陸では、暖温帯常緑広葉樹林の北限界となるCI=-10の北進速度に比べ、WI=80の北進速度がはるかに大きいことによる。その結果、朝鮮半島では、主要50樹種の現生育地の大部分が、2065年には生育可能なWI域から外れる。A帯が狭い日本では、2065年には暖温帯常緑広葉樹林気候帯が本州低標高帯のほぼ全域まで広がる。移行帯に位置する広大な冷温帯落葉樹林の森林動態は大きく影響されるだろう。▶温暖化は森林生態系の物質循環にも影響する。すなわち、樹木の一次生産力は気温変化に対し直線的に、微生物による分解力は指数関数的に反応する。この反応性の違いが、動的平衡状態にある成熟林を非平衡系に誘導する。数十年のスパンで進行する温暖化が物質循環に与える影響を、土壌有機物の動態を事例に評価する。