| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-079 (Poster presentation)
春日山原始林 (奈良県奈良市) では、高密度なニホンジカによって樹木の更新阻害が起きている。森林更新の可能性を検討することを目的として、ニホンジカの嗜好性と樹木稚樹の生育地形の関係を調査した。春日山原始林に10 m×10 mの森林調査区を200箇所設定し (2 ha)、胸高直径 (DBH) 5 cm以上のすべての幹 (ステージ3) の胸高周囲長を計測し、高さ1.3 m以上DBH5 cm未満の幹 (ステージ2) と高さ0.5 m~1.3 mの個体 (ステージ1) を計数した。既往研究でニホンジカの不嗜好種とされている樹種を本研究で不嗜好種とし、それ以外の樹種を嗜好種と定義した。10 mメッシュのDEM情報から地形 (TPI: topographic position index、対象メッシュとその周辺の標高差) と傾斜角 (SI: slope inclination) を算出して10 m×10 m毎に不嗜好種・嗜好種のステージ1の個体数を比較した。不嗜好種9種と嗜好種55種が確認され、不嗜好種はステージ1の92%を占めていた。一般化線形モデルによると、不嗜好種はTPI、TPI2、SI2を説明変数としたモデル、嗜好種ではTPI、TPI2、SI、SI2を説明変数としたモデルが選択された。不嗜好種・嗜好種共にTPI = 0付近の凹凸のない地形に比較的多く分布し、極端な尾根や谷には少なかった。SIでは、不嗜好種は緩傾斜地に個体数が多いのに対して、嗜好植物は急傾斜地に個体数が多い場合があった。嗜好植物のステージ1が多かった調査区は、急斜面や崖を含んでおり、急斜面や崖は樹木稚樹や草本植物の逃避地として機能する可能性がある。